【インタビュー】コスタリカ代表ピント監督「失敗から学び、今を作る」

2014年07月19日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「選手たちが私の考えをよく理解し、期待に応えてくれた」

戦前の予想を覆し、コスタリカを史上初のベスト8に導いたピント監督の発言は、示唆に富む。 (C) Getty Images

 繰り返した失敗を踏み台にして、初めて辿りついたベスト8――。コスタリカを躍進に導いたホルヘ・ルイス・ピント監督の言葉には、説得力がある。
 
 下馬評を覆し、ブラジル・ワールドカップで旋風を巻き起こした指揮官の言葉は、日本サッカーが噛みしめたい金言と言えるだろう。
 
――◆――◆――
 
 2006年6月16日、私は記者席でホルヘ・ルイス・ピントの近くに座り、ドイツ・ワールドカップのグループリーグ、オランダ対コートジボワール戦を観戦していた。
 
 スター選手たちの足下にボールが渡ると、記者たちも身を乗り出した。しかし、ピントだけは違う場所に視線を送っていたのをよく覚えている。誰もがロッベンを観ている時、ファン・ボンメルを凝視し、ドログバがボールを持っている時、ゾコラに注目していた。
 
 ピントは、86年メキシコ大会からワールドカップを欠かさず間近で観てきた。TVには映らないところまでしっかりノートに書き込み、たくさんの写真を撮った。
 
 そして今回のブラジル大会――その成果がベスト8進出という最高の形で表われたのだ。
 
――あなたにとって憧れであり、夢であったワールドカップを初めて戦った感想は?
「Feliz(幸せ)。そのひと言に尽きる。私だけでなく、チームの全員がとても幸せな気分だった。多大な努力の成果と良いサッカーを見せられた。強国との対戦でも、差はほとんど感じなかった。選手のパフォーマンスには満足している」
 
――「死の組」の印象は?
「実際のところ、あのグループを抜けられる可能性は4チームすべてにあった。コスタリカにとっての難点は、本大会の経験者が少なかったこと。今回登録したメンバーの中に、06年大会に参加した選手はふたりしかいなかった。初戦のウルグアイ戦で、先制された後に苦戦を強いられたのは、本大会の雰囲気に圧されたからだと思っている。だが幸い、気持ちを整え、冷静さを取り戻し、逆転できた」
 
――今大会のコスタリカ代表は、具体的にどんなチームでしたか?
「効率性と秩序を重視し、正しいポジショニング、さらにコンパクトな動きで局面を打開する。理想通りに行かない時もあったが、私の考えを選手たちは十分に理解し、期待に応えてくれた。チームは監督そのものを表わしていると言うよね。今回のコスタリカ代表がまさにそうだった」
 
――それにしても、見事な快進撃でした。
「そうだね。この満足感は言葉にできないよ。誰も予想していなかったグループリーグ突破を果たしただけでも、今大会は大成功だったと言えるのに、それ以上の結果を残せたんだ。ティコス(コスタリカの人々)によるバックアップは素晴らしかった。すべての人がまるでチームの一員であるかのように我々をサポートしてくれた。選手たちが国民の支援を糧にしていたことは確かだ。初出場から24年間成し遂げられなかったベスト8進出を果たせた背景には、国のサポートが間違いなくあった。本当に感謝している」
 
――国民のサポート以外に、好成績を残せた要因は?
「ベスト8進出は偶然ではなく、これまでチームが104試合を戦ってきた結果である。私としてはプロチームの監督として、1020試合を戦ってきた。そしてすべての試合から、良い面を取り込んできた。もちろん、86年大会から欠かさず観戦しているワールドカップからも、多くを学び、今大会に活かせたと自負している」
 
――過去のワールドカップではスタンドからたくさんの写真を撮っていましたね。今回はさすがにカメラを持ってベンチに入ることはできませんでしたが。
「写真は私にとって、とても役立つものだ。1試合にざっと50枚から100枚を撮る。それが、ポジショニング、ゾーンプレスの動き方、連係プレーなど戦術的なアイデアのヒントになるんだよ。今は便利な世の中になり、試合ごとに様々なデータが得られるようになったが、私には昔ながらのやり方が分かりやすくていい(笑)。今大会は、息子に写真の撮影を頼んでおいたよ」

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