2年連続で3名の選手をJクラブに送り込む興國高。全国大会に出場せずともプロに人材を供給する理由は?

2018年09月06日 森田将義

プロに人材を送り込める理由のひとつはJアカデミーとの差別化にある

すでに岐阜でJデビューを飾っている村田。ポテンシャルは一級品だ。写真:森田将義

 大阪の興國高は昨年、大垣勇樹(現・名古屋)を筆頭に3名ものJリーガーを輩出し、注目を集めた。今年もFW村田透馬(3年/岐阜入団内定)、FW中川裕仁(3年/愛媛入団内定)、DF起海斗(3年/山口入団内定)のプロ入りがすでに発表されている。

 2年続けて複数人の選手をプロに送り込む高校は、日本一の経験を持つ強豪校くらい。インターハイ、選手権ともに出場したことないチームから立て続けに3名のJリーガーが出るのは異例と言える。
 
 強化を始めて12年のチームがなぜ――。
 
 前提としてあるのは、興國高の門を叩く選手の変化だ。2013年に同校史上初めてのプロ選手となった和田達也(現・栃木)、翌年には元U-18日本代表の北谷史孝(現・岐阜)がJ入りを果たし、「Jリーガーを輩出したことで、速さや高さなど突出した個の力を持った選手が入ってくれるようになった」(内野智章監督)。加えて、プロ志向が強い選手が集まるようになったのだ。

 とはいえ、高校入学時点でトップクラスの選手は主にJクラブのアカデミーに籍を置き、高体連に進む者は少ない。内野監督が「質を比べたら、Jのアカデミーにいる選手のほうが絶対に高い。誰が見ても上手くて、判断のミスも少ないし、運動能力も高い」と分析するように、埋められない差は存在する。
 
 同じ育て方をしていても、プロに選ばれる選手は出てこない。そこで興國高が採っているのはJクラブのアカデミーとの差別化だ。

 正しい判断を繰り返し、ミスなくボールを繋げるユースの選手たちと比べ、興國高の選手は相手に囲まれてもパスを選択しない。強引にでも突破しようとする選手が目立つ。パスを選ぶ場面でも仕掛けていく選手は他とは違うリズムを持つため、相手にとって守りづらいという考えだ。

 内野監督も、失敗しながら突破できるようになれば良いと指導をしている。「ボールを効果的なタイミングで出せずにミスになり、これまで大事な試合を取りこぼす原因になってきた」(内野監督)一方で、アタッキングサードをひとりで突破できる選手たちはJクラブから注目されるようになった。

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