内容では完全に韓国が上回るも…「なでしこジャパン」を勝利に導いたふたりの立役者

2018年08月29日 早草紀子

自分自身の不甲斐なさを痛感していた菅澤に生まれた一発

韓国戦で先制点を決めた菅澤(9番)は鬱憤を晴らす一発となった。一方、韓国のアタッカー陣に対して、清水(2番)は粘り強い対応を見せた。写真:早草紀子

 アジア大会準決勝で韓国に2-1で辛勝した「なでしこジャパン」。菅澤優衣香(浦和レッズL)のゴールで先手を取るも、韓国の勢いに飲み込まれ、最後まで自分たちのペースを完全に取り戻すことができなかった。今大会でここまで追い込まれたのは初めてのこと。球際は甘く、動き出しも鈍かった。加えて北朝鮮との準決勝から中2日。蓄積された疲労も表面化していた日本が劣勢になるのは必然でもあった。
 
 ではなぜ勝利を掴むことができたのか。明確な勝因を探すのは難しいが、最初のチャンスを先制点に結びつけた菅澤のゴールは、結果としてチームを大きく助けた。
 
 今大会に入ってビッグチャンスを逃し続けてきた。「本当に、次は決めきりたい……」(菅澤)。自分自身の不甲斐なさを痛感する日々だった。今大会では高倉麻子監督の菅澤の可能性にかける想いが出場機会に表われている。だが皮肉にも期待に応えたい気持ちが強ければ強いほどゴールは遠ざかっていくようだった。
 
 それでも菅澤らしいポストプレーで、ゴールを演出し続けていた。そんな菅澤に、まさに"ここぞの一発"が準決勝の大一番で生まれた。そしてオウンゴールを誘ったプレーも菅澤の身体の強さを生かしたもの。清水梨紗(日テレ・ベレーザ)からのクロスを「一度マイナスへ落としてたから相手も警戒していると思った」と前へ折り返したところ、思いがけないコースに思わずDFが反応し、オウンゴールを引き出した。ようやく闇を抜けた菅澤にとって、ここからが勝負だ。
 
一方、押し込まれ続けるなかで、奮闘したのが守備陣だ。右サイドバックの清水はアジア大会直前のアメリカ遠征でスピードの対応に自信を持って臨んでいた。その影響はビルドアップにも見られた。オウンゴールにつながる攻撃は清水のタイミングを計ったビルドアップからだった。
 
 しかし守備面では新たな課題にぶつかった試合でもあった。「韓国のサイドからの攻撃を気にしてたけど、真ん中3人のコンビネーションが凄かった。こういうサッカーをしてくるのかと驚いた」という清水。イ・ミナの2列目からの飛び出しにはかなり苦労していた。それでも最後は迷わずスライディングで切っていく。終始明確な彼女らしい守備を貫いた。
 

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