ロシアへ飛び立つ西村拓真の知られざる高校時代。今夏インターハイ得点王の後輩が見た練習場での風景

2018年08月31日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

高校時代は2年次に選手権で優勝するも世代別代表には縁がなかった

高校時代から練習の虫だった西村。自身が納得するまでやり続ける姿勢が今の飛躍に繋がっている。(C)SOCCER DIGEST

 仙台の西村拓真は新たなチャレンジの場としてロシアリーグを選んだ。
 
 J1で目覚ましい活躍を見せていた21歳の若武者は、8月31日に同1部・CSKAモスクワに完全移籍。今季チームはチャンピオンズ・リーグに出場し、グループステージではレアル・マドリーと同居することが決まった。
 
 今季の西村は、ゴールへの意欲と献身的なプレーで仙台を牽引。リーグ戦では24試合で11ゴールを奪い、得点ランク4位タイという結果を残していた。ゴール数は小林悠(川崎)と並んで日本人トップの成績だ。

 昨季はルヴァンカップでニューヒーロー賞を受賞したとはいえ、28試合で2ゴールしか奪えていなかっただけに、2018年シーズンにブレイクした選手のひとりと言えるだろう。
 
 自らの足でロシア行きを勝ち取った西村。今でこそ飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を遂げているが、高校時代は世代を代表するようなプレーヤーではなかった。

 富山一高ではサイドハーフや2列目を担い、キレのあるドリブルと図抜けたゴール嗅覚を発揮。2013年度の高校サッカー選手権で優勝し、2年生ながら優秀選手にも名を連ねた一方で、世代別代表にはまるで縁がなかったのだ。
 
 この年の高体連で先頭を走っていたのは、2013年のU-17ワールドカップに出場した渡邊凌磨(現・新潟)、鈴木徳真(現・筑波大)の前橋育英コンビや、流経大柏の小川諒也(FC東京)といった面々。仙台入りが決まったのも土壇場で、2014年度の選手権出場を逃したあとの同年12月だった。
 
 ではなぜ、西村はそうした状況からJ入りを勝ち取り、飛躍を遂げたのか。気鋭のアタッカーには"努力が出来る"という武器があったからだ。
 
 証言するのは西村の成長を間近で見てきた富山一高の大塚一朗監督だ。今夏に行なわれたインターハイで話を伺った際、指揮官の口から高校時代を振り返る話が出てきた。
 
「プロを目指したいという子に西村の話をよくするんです。『西村はこんなところじゃ音を上げなかったよ』と。いつもより多く10本走ろうと言っても、西村は終わった後におかわりを下さいと平気で言ってくる。自分が納得しないと練習を終わってくれない選手でしたから」
 
 当時から西村は"努力をする才能"を持っていたという。練習では自分が納得するまでやり続け、誰よりも追い込んできた。

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