【W杯 決勝展望|ドイツの視点】守備の安定があるからこそ、先制点を与えず奪えている

2014年07月13日 マルクス・バーク

レーブ監督がどうメッシを抑えにかかるか、楽しみでもある。

ここまで6試合すべてで先制点を奪っているドイツ。先行逃げ切りを可能にしているのは、相手に先制点を与えない安定した守備力だ。 (C) Getty Images

 試合で勝つためには、適切なマッチプランに加えて、少しばかりの幸運が必要だ。その少しばかりの幸運を、今大会のドイツ代表は味方につけている。
 
 ポルトガル戦、フランス戦、そしてブラジル戦。いわゆる強豪国との試合で、ドイツは幸運にもそれぞれ12分、13分、11分と早い時間帯に先制点を奪った。衝撃的な結果に忘れているかもしれないが、ブラジルとの準決勝は先制するまでは相手のペースだった。
 
 先制点はやはり重要であり、アルゼンチンに先にゴールを許せば、下馬評はどうあれ、決勝戦は苦しい展開を強いられることになる。
 
 リスクを負った魅力的な攻撃サッカーを披露した2006年、素早いトランジション(攻守の切り替え)を追求した2010年とも違い、今大会のドイツは守備の安定を最優先している。右SBのフィリップ・ラームをアンカーで起用し、最終ラインに4人のCBを並べたヨアヒム・レーブ監督の意図はそこにあり、ラームを本来のポジションに戻してからも、それは変わらない。守備が安定しているからこそ、先制点を与えずに奪えているのだ。
 
 もっとも、左サイドの守備には不安が残る。左SBのベメディクト・ヘーベデスは、このポジションでの経験がほとんどなかった急造ながら、堅実なパフォーマンスを見せている。問題は、メスト・エジルがしばしば彼をひとりにしてしまうことだ。
 
 ポイントのひとつは、レーブがどんなリオネル・メッシ対策を用意するかだ。ゴンサロ・イグアイン、アンヘル・ディ・マリアと、アルゼンチンの攻撃陣には警戒すべきタレントが他にもいる。そのなかでレーブがどうメッシを抑えにかかるのか、ある意味、楽しみでもある。
 
 今大会のドイツの大きな強みと言えば、セットプレーだ。トニ・クロースが蹴るコーナーキック、フリーキックは正確無比で、ポルトガル戦とフランス戦でヘッドを叩き込んだマッツ・フンメルスという強力なターゲットがいる。練りに練ったバリエーションも豊富だ。フランス戦とブラジル戦の先制点は、いずれもセットプレーから奪っている。
 
 多くの戦術オプションを持っているのも強みだ。ミロスラフ・クローゼが良くない場合は、トーマス・ミュラーを前線に上げればいい。文字通りの切り札として機能しているのが、アンドレ・シュールレだ。素早く試合に入り、持ち前のスピードで相手の守備陣を混乱に陥れる。
 
 私の目から見ても、ドイツは優位に立っていると思う。しかし、アルゼンチンは決勝トーナメントに入ってから無失点だ。3試合でひとつのゴールも許していない。タフな戦いを覚悟する必要があるだろう。
 
文:マルクス・バーク
翻訳:円賀貴子
 
【マルクス・バーク】
ドイツ公共第一TVウェブ版のドイツ代表番として、ブラジルで密着取材中。客観的で冷静な筆致に定評がある。1962年7月8日生まれ。普段はドルトムントに張り付いている。
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