イニエスタ、ポドルスキ対策に奇策なし。曺貴裁監督率いる湘南は0-2敗れた一戦でどう戦ったのか

2018年08月21日 隈元大吾

湘南は0-2で敗れた。だが、自分たちのスタイルを崩さなかった

イニエスタとポドルスキを意識するのではなく、指揮官が選んだのはいつも通りの戦い方だ。(C)SOCCER DIGEST

[J1リーグ23節]湘南0-2神戸/8月19日/BMWス

 アンドレス・イニエスタとルーカス・ポドルスキがいるからといって特別な対策を講じたわけではない。世界的名手ふたりを擁する神戸戦を控え、湘南の曺貴裁監督はこんなふうに釘を刺したものだ。
 
「サッカーは彼らふたりでやるわけではない。(神戸は)各ポジションに能力の高い選手がたくさんいますし、だから彼らにマンマークを付けるとか、人数を割いてほかの選手を放っておくつもりはまったくない」
 
 指揮官の言葉の通り、湘南は前線から攻撃的なディフェンスを仕掛けた。意識したのは、ワールドカップを制した経験を持つ才能たちよりもボールの出どころのほうだ。そして、それは今まで育んできた往来通りの自分たちの戦いだった。
 
「分かっていても奪える選手ではない」と山根視来は元スペイン代表へのリスペクトを込めつつ、こんなふうに一戦を振り返っている。
 
「自分たちらしく前からプレスをかけ、奪ったらしっかり(ボールを)前に入れて、入れられなかったらしっかり動かす。そういうプレーができていたと思う」
 
 またボランチの齊藤未月は、「相手にボールが入ったら奪うのが厳しいという感覚があったので、ボールが入る前に奪うことを個人的に意識していた」と明かしたように、持ち前のボール奪取能力を発揮してインターセプトやプレスバックを遂行した。
 
 タイトな寄せでときに奪い切り、ときにファウルを取られたイニエスタとのマッチアップもまた、いつもの自分たちの戦いの線上にあった。
 
 それでも、湘南は0-2で敗れてしまう。集中力高くプレーし続けていたなかで、2失点はいずれもミスで相手にボールが渡ったことに端を発していた。そうして37分にはイニエスタのクロスを三田啓貴に、76分にはポドルスキのシュートのこぼれ球を郷家友太にそれぞれ決められた。
 
「湘南のプレッシングをどうやってパスで掻い潜るかというところで、前半から少し手を焼いた。90分を通して相手がハードワークしてきて、非常に難しいゲームだった」
 
 神戸の吉田孝行監督がそう語ったように、湘南は前向きな守備から流れを手繰り、攻めては相手を上回るシュートを放ちもした。だが枠を捉えきれず、あるいは好守に遭って、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

次ページ敗戦したが、貫いた姿勢がチームに確かな手応えをもたらした

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