【W杯決勝】ドイツ対アルゼンチン――過去2度の決勝戦を振り返る

2014年07月12日 サッカーダイジェストWeb編集部

徹底マークされたマラドーナを囮にアルゼンチンが主導権握る。

マラドーナを徹底マークしたマテウス(スライディング)。同じ年のふたりのライバル関係はここから始まった。 (C) Getty Images

 ブラジル・ワールドカップの決勝戦は、開催国ブラジルを7対1という衝撃的な大差で破ったドイツと、PK戦の末にオランダを下したアルゼンチンが対峙することとなった。
 
 戦前の予想では、実力的に上回っていると見られるドイツが優勢。また過去を振り返ると、決勝戦で波乱は起こりにくく、また直近の試合がPK戦にもつれ込んだチームは勝てないという前例も、ドイツを後押ししている状況だが、アルゼンチンが甘んじて敗北を受け入れるわけがない。あらゆる策を講じて、最後の一戦に臨む。南米で欧州勢が勝てない、というワールドカップにおける代表的なジンクスを守ることができるだろうか。
 
 さてこの両チーム、これまでワールドカップでは6度対戦し、ドイツ(西ドイツ時代を含む)が3勝2分け1敗とリードしている。そして決勝では、86年メキシコ大会、90年イタリア大会と連続で対峙し、覇権を分け合っている。
 
 ここでは、この四半世紀ほど前の2度の決勝戦を振り返りながら、間もなく火蓋を切る最後の決戦に思いを馳せよう。
 
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 1986年6月29日、灼熱のアステカ。アルゼンチンと西ドイツがピッチに姿を現わした。欧州でのテレビ中継を優先し、暑い正午にキックオフされたこの一戦。しかもメキシコシティは海抜2千メートルを超え、空気は平地の4分の3ほどと、あまりに過酷な環境のなかで世界が注目する戦いは開始された。
 
 アルゼンチンはカルロス・ビラルド監督がディエゴ・マラドーナを活かすためのチームを編成。これが奏功し、全権を与えられた神童はピッチを自由に駆け回り、これまでに5得点4アシストと大活躍を見せた。数字上だけでなく、グループリーグ・イタリア戦での技巧的シュート、準々決勝イングランド戦での「神の手」「5人抜き」、準決勝ベルギー戦でのドリブルシュートなど、すでに後世に残る伝説をも創り上げていたのである。
 
 対する西ドイツは、大会を通して完調とは言い難く、グループリーグでは好調デンマークに完敗を喫し、決勝トーナメントでも1回戦のモロッコ戦では終了間際の1得点で逃げ切る辛勝、そして開催国メキシコとの準々決勝はスコアレスでPK戦にもつれ込んだ。フランツ・ベッケンバウアー監督が試合ごとにメンバーや作戦を変え、何とか決勝戦に進んできたのが、この大会の西ドイツだった。
 
 試合は大方の予想通り、アルゼンチンのペースで進む。マラドーナは、ローター・マテウスに徹底マークされて決定的な仕事はできなかったが、代わりに他の選手がマラドーナを囮にしていくつもチャンスを作り出した。

 そして23分、FKからホセ・ルイス・ブラウンがヘッドで先制点を挙げる。後に肩を脱臼しながらも最後までピッチに立ち続けたスイーパーの、殊勲の大会初ゴールだった。一方、ゴールを飛び出しながらボールに触れられなかったGKハラルド・シューマッハーにとっては、悔いの残るプレーとなった。

次ページ勢いづく西ドイツを奈落の底に突き落とした天才のラストパス。

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