【W杯 今日は何の日?】7月12日「決勝戦での完敗…王国が味わった屈辱」

2014年07月12日 サッカーダイジェストWeb編集部

決戦前夜に見舞われたアクシデントにより完敗を喫した98年。

ジダンのヘッド2発に沈んだブラジル。ワールドカップの舞台で、ブラジルがここまで一方的にやられる試合は、これまでほとんどなかった。 (C) Getty Images

 1998年7月12日、パリ郊外サンドニのスタッド・ド・フランスに、世界の目が集中していた。フランス大会の決勝が行なわれるためだ。開催国フランスと優勝候補ブラジルという最高のカードに、多くの人々が白熱した好ゲームを期待していた。
 
 しかし決勝当日、ブラジルは大きなアクシデントに見舞われていた。チームのエースであるFWロナウドが前夜に痙攣を起こし、試合出場が危ぶまれる状況に陥っていたのである。そのニュースはフランス側にもすぐに伝わったが、フランスのキャプテンであるディディエ・デシャンは「相手の陽動作戦だと思った」という。
 
 さらに気を引き締め直したフランスの前に、ロナウドの姿はあった。しかし試合直前までロナウドの出場の有無をめぐってブラジルは揺れ動き、最初にメディアに配られたスタメン表にロナウドの名はなかった。まさに、土壇場で決まった強行出場だったのである。
 
"怪物"と呼ばれる天才ストライカーも、このような最悪な体調でまともなプレーを見せられるはずがない。そしてロナウドだけでなく、動揺したチームメイトもまた、この大事な試合で揃って低調なプレーに終始。ブラジルは、序盤から地元の大観衆の声援に後押しされたフランスの攻勢を許すこととなった。
 
 そして27分、CKからジネディーヌ・ジダンが彼にしては珍しい豪快なヘッドでフランスに先制点をもたらす。さらに前半ロスタイムには、またもCKでジダンがヘッド。強烈な弾道はゴールライン上にいたロベルト・カルロスの股間を抜け、フランスが2点のリードを得た。
 
 ブラジルにとっては、2失点で済んだ前半、という言い方がふさわしかった。フランスのFWステファン・ギバルシュが通常通りの得点能力を見せていれば、さらなる点差がついていた試合だったからだ。ただしフランスにとっては、この2点で十分と言えた。前半でほぼ、勝負はついていたのである。
 
 後半もブラジルは懸命にプレーするも、ゴールに近いのは常にフランスのほう。68分にフランスがマルセル・デサイーを2枚目のイエローカードで失っても、大勢に何ら影響はなかった。そして後半ロスタイム、エマニュエル・プチによるゴールがフランスに追加され、世界注視の戦いは終わった。決勝でブザマな完敗を喫した後、開催国の歓喜を目前で見せつけられるという、これ以上ない屈辱……。ブラジルの選手は誰もが涙を流し、頭を抱え込んだ。
 
 振り返れば、4年前に優勝を飾ってから、積極的に練習試合を行ない、一時は世界最強といわれたブラジル。連覇に向けて歩みは順調だったが、97年秋頃から下降線を辿り、10番のジュニーニョ・パウリスタを重傷で失うなどのアクシデントにも見舞われ、最も調子が落ちた状態で本番を迎えてしまっていた。
 
 しかし過去を見ると、屈辱を受けたブラジルは、多くの場合、その4年後に結果を残して溜飲を下げてきた。前回優勝国でありながらグループリーグ敗退を喫した66年イングランド大会、優勝のためにブラジルらしさを捨て守備的なチームで臨んだにもかかわらず、宿敵アルゼンチンに敗れて決勝トーナメント1回戦で姿を消した90年イタリア大会、そしてこの98年大会と、いずれも、次の大会では優勝を果たしているのだ。唯一、50年ブラジル大会の悲劇の後には、雪辱までに8年を要したが……。
 
 さて今回、母国の大会で決勝を目前にしてドイツに1-7の大敗を喫したブラジル。おそらく立ち直るには相当な時間とエネルギーを要するだろうが、ここから再び歩みを始め、偉大な先達が成し遂げてきたように、4年後、ロシアの地で雪辱を果たせるだろうか。
 
 
◆7月12日に行なわれた過去のW杯の試合
 
1966年イングランド大会
「グループリーグ」
西ドイツ 5-0 スイス
ブラジル 2-0 ブルガリア
ソ連 3-0 北朝鮮
 
1998年フランス大会
「決勝」
ブラジル 0-3 フランス
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