【セルジオ越後の天国と地獄】有名なコックを招いても、今の日本の現状では安いピラフしか作れないよ

2014年07月10日 週刊サッカーダイジェスト編集部

今の状況は、川淵元会長が「オシム」と口を滑らせた8年前に似ている。

後任人事よりも取り上げるべき事案はある。メディアが変わらなければ、サッカー界も変わっていかないよ。(C) SOCCER DIGEST

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※週刊サッカーダイジェスト7.22号(7月8日発売号)より
 
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 日本はすでにブラジルを後にしているけど、ワールドカップはいよいよ佳境を迎えているね。そんななか、どこから情報が漏れたのか、日本代表の後任人事の噂が紙面を飾る機会が増えてきている。2006年のドイツ大会で負けた後に、成田空港で当時の川淵会長が「オシム」と口を滑らせた状況となんだか似ているよね。ワールドカップで結果を出せず、協会側は批判の矛先が自分たちに向けられる前に、次の代表監督を選ぶことでメディアの追及を逃れようとしているのかもしれない。
 
 だけど、順番としてはやっぱりおかしいよ。日本がなぜワールドカップで勝てなかったのか。まず着手すべきは、その検証作業と今回の結果を招いた責任問題の精査だ。これらを棚上げにしておいて、後任人事がニュースになることの違和感はどうにも拭えない。メディアが喜びそうなトピックではあるけれども、いろんな思惑もあって、協会側も「突貫工事」で早く決めようとしているのではと邪推したくもなる。これでは組織として正しい道のりを歩んでいるのか疑問だし、ザックを悪者にしているとしか思えない。
 
 なぜ、後任人事をそこまで急ぐ必要があるのか。不自然だよ。肯定するわけではないけど、ザッケローニ監督の時だって、最初の2試合は原技術委員長が指揮を執っていたし、無理して9月のテストマッチに間に合わせる必要はない。協会としてまずやるべきことをやってから、新監督を決めても遅くはないよ。
 
 待ち切れないメディアのために、早く決めてくれているのかもね。だいたい、次の技術委員長は誰になるのか。現担当者は新監督を決めた後に退任すると言われていて、候補者には何人かの名前も挙がっている。メディアも新監督が誰になるかより、ある意味で日本代表をリードすべき「ボス」が誰になるのかをもっと取り上げるべきだと思うね。
 
 新たに監督になる人物を誰が仕切るのか。そこを注視すべきだけど、そもそも、新監督を決めた張本人がその役目を最後に、職を離れるってずいぶんとおかしな話だよ。新監督が失敗に終わったら、いったい誰が責任を取るんだろうね。
 
 代表監督の後任人事よりも、メディアが取り上げるべき事案はもっとあるはず。メディアが反省してやり方を変えなければ、サッカー界も変わっていかない。このサイクルでは、この先も日本が世界で勝てるとは思えない。もしかしたら売り上げに結びつかなくても、日本サッカーのためになる重要な事柄を世間に問うて、興味を持たせて、皆で考えていかないと、結局、最後は「ドンマイ、ドンマイ」で終わってしまう。
 
 日本サッカーがどうすれば強くなるのか――。このシンプルな命題を真剣に考えている日本人が、いったいどれだけいるのか、ますます不安になってくるね。

次ページメキシコでできたことが日本でもできるなんて単純な話じゃない。

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