辛勝のネパール戦に見えた光明――"挑戦的"な渡辺皓太が森保ジャパンの「ボランチ候補」に名乗り

2018年08月15日 川端暁彦

渡辺の1本のパスが、結果として日本を救うことになった

効果的にボールを引き出し、挑戦的なパスを繰り出した渡辺のプレーはネパール戦の収穫のひとつだ。写真:川端暁彦

[アジア大会]U-21日本代表1-0U-23ネパール代表/8月14日/インドネシア

 ギラギラと燃えるようなことを言ってもいたし、実際に練習で出してもいた。9か月前、タイでのことである。東京VのMF渡辺皓太は森保ジャパン結成後最初の招集となったM-150杯のメンバーリストに名を連ねていた。しかし、渡辺はフィールダーで唯一ピッチに立っていない選手のまま、大会を去ることとなった。
 
 昨年12月のM-150杯メンバーはU-20ワールドカップに臨んだ選手たち以外からの選考となり、当初はBチームに近い位置付けと観られていた。ただ、今回のメンバーにGKオビ・パウエル・オビンナ(流通経済大)、DF立田悠悟(清水)、MF長沼洋一(岐阜)、神谷優太(愛媛)、三笘薫(筑波大)、松本泰志(広島)、FW上田綺世(法政大)、旗手怜央(順天堂大)の8名が入り、他にもMF井上潮音(東京V)が常連メンバーとなったことからも分かるように、下剋上を狙う選手たちにとって重要な大会となった。
 
 だが、渡辺はこの流れに乗れなかった。タイに着いて2日目の練習で左足首を負傷してしまったのだ。重篤な症状ではなく、無理をすればやれるレベルだったかもしれない。だが結成早々のチームが借り物である選手に無理をさせる道理もない。渡辺はリハビリメニューを続けたうえで、大会途中で帰国の途につくというなんともやり切れない経験をすることとなった。
 
「みんながプレーしている姿を観て、本当に悔しかった」という言葉を残していたが、本当に悔しい思いをするのはそれから後である。ユース時代からのチームメイトである井上を筆頭に、活躍を続ける当時の選手たちを観て、思うところがなかったと言えば、ウソになるだろう。
 
「僕が行っていない(代表の)遠征をテレビで観ていたら(井上が)凄く活躍していて、ここで自分も活躍していきたい、と」
 
 ただ、遅れた分を取り戻すだけのプレーを今季のJ2リーグでは見せ付けている。これまでそれほど多くなかったアシストを量産し、自ら持ち味であると語る「運動量と球際」の部分に加えて、直接的にゴールへ絡む「質」の部分が明らかに向上してきた。運動量にしても、単に走り回るだけでなく、より効率的に戦うプレーができている。
 
 1-0と最低限とも言える白星になったアジア競技大会第1戦、ネパールとの試合においても、渡辺のプレーには光明があった。効果的にボールを引き出し、鋭く、そして挑戦的なパスを繰り出す。1点目に繋がった長沼洋一をオープンスペースに走らせたプレーは象徴的で、「相手がマンツーマンで来ていたので狙っていた」という1本のパスは、結果として日本を救うことになった。
 

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