【総体】青森山田、市立船橋、東福岡、前橋育英… ベスト8を前になぜ名門校は姿を消したのか?

2018年08月10日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

2回戦で姿を消した前橋育英は大会の特性を活かせず…

本来の力を出せれば、十分に4強以上を狙えたはずの前橋育英。しかし、成す術なく敗れ去る形となった。(C)SOCCER DIGEST

 三重県で開催されているインターハイ・男子サッカーは早くも前半戦を終了。55校によって争われていたビッグトーナメントの行方は8チームに絞られた。

 初日から幾多の好ゲームが繰り広げられた今大会で、前半戦最大のトピックは名門校の早期敗退だろう。青森山田、市立船橋、東福岡、前橋育英といった優勝候補が次々と大会から姿を消す展開となったのだ。
 
 全国制覇を狙えるだけの力を持っていたチームと2回戦で相まみえたのは不運であったが、青森山田は昌平、前橋育英は大津、市立船橋は山梨学院に惜敗。3回戦に駒を進めた東福岡も、三浦学苑にふたつのPKを与えて1-2で敗れた。

 上記の4校を撃破した昌平、大津、山梨学院、三浦学苑は8強進出を決めているが、高校年代最高峰のプレミアリーグを戦うチームでベスト8に勝ち進んだのは富山一のみ。波乱含みの大会になっているのは間違いないだろう。
 
 とりわけ、2013年度以降は市立船橋(13、16年度)、東福岡(14、15年度)、流経大柏(17年度)といった全国でも指折りの強豪校がインターハイの栄冠を掴んできた。ベスト4に残ったチームを見ても、青森山田や前橋育英などが勝ち残っている。 

 市立船橋の朝岡隆蔵監督が「サッカーって本当に分からない」と話したように、夏の全国舞台を勝ち上がるのは一筋縄ではいかない。ただ、今大会のように全国優勝の経験がある名門校が次々と早期敗退を喫する展開は、近年ではあまり見られなかったパターンである。

 こうした展開となった理由を探っていくと、やはり今大会は近年のなかでも各校の実力が最も拮抗した大会である点が挙げられる。

 ここ数年、優勝候補と呼ばれるチームの力は頭ひとつ抜きん出ており、チームでも個人でも圧倒できていた。しかし、今年は力が均衡。ちょっとした出来事が試合展開を左右した。
 
 例えば、前橋育英は大津との2回戦で試合の入りに躓いた。相手の戦い方が戦前の予想とは異なり、ロングボール主体の攻撃を選択。これに面食らったチームは最後まで噛み合わず、大津の術中にまんまとハマる形となった。

 ハーフタイムで戦術徹底を図るなど、懸命に試合の流れを引き戻そうと試みるも不発。最後までゴールはこじ開けられず、0-3で敗戦を喫した。

 より多くの時間を戦える90分ゲームであれば、選手交代などで挽回できただろう。強引に個の力で局面を打開することも可能だったかもしれない。ただ、通常よりも短い70分の試合時間で実力が接近していると、ちょっとしたボタンの掛け違いが最後まで尾を引く。ひとつのミスが命取りになるという意味で、典型的な一戦だった。

次ページ逆に大会の特性を活かしたのは富山一。いかにして8強へと勝ち上がったのか

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