ビダルを獲得したバルサだが、いまひとつ「らしさ」を感じない新戦力の顔ぶれに疑問の声も…

2018年08月07日 山本美智子

指揮官は「らしさ」より「競争力」を重視。

メッシ、スアレスと同じく南米の出身で、1987年生まれも同じ。ビダルはバルサになにをもたらすのか。(C)Rafa HUERTA

 リーガ・エスパニョーラの開幕まで2週間を切った8月6日、バルセロナはまたひとり新たに戦力を加えた。チリ代表MFのアルトゥーロ・ビダルを、バイエルン・ミュンヘンから獲得したのだ。そしてエルネスト・バルベルデ監督はこう明言した。

「ビダルの獲得を持って、この夏の補強は打ち止めとする」
 
 今夏にJリーグのヴィッセル神戸に移籍したアンドレス・イニエスタは、12歳からバルサの下部組織で育ち、テクニック、プレービジョン、パスセンスなど、バルサで必要とされるスキルに長けた、まさしく「バルサのDNAを持つ」プレーヤーだった。

 ただ、ここまでにバルサが獲得した4人――クレマン・ラングレ、アルトゥール、マウコム、ビダル――については、「いずれもバルサのDNAを持ったプレーヤーとは、大きくタイプが異なるのではないか」という声が、一部のメディアから上がっている。

 もっともこれには、指揮官の確固たる狙いがあった。バルベルデ監督は「バルサらしいチーム」をめざす前に、「競争力のあるチーム」を作ろうとしているのだ。

 昨シーズン、バルサはリーガ・エスパニョーラとコパ・デル・レイの国内2冠を達成したものの、チャンピオンズ・リーグではベスト8でローマに逆転負けを喫した。それはいまも、チームの大きな傷となっている。

 たしかにバイエルンから獲得したビダルは、「バルサらしい選手」とは言えないかもしれない。だが彼が、負けず嫌いで、異常なまでに勝利に固執し、周囲を巻き込むパーソナリティーの持ち主であるのは、あまりにも有名な話だ。

 事実、バイエルンで彼を指導した元バルサ監督のジョゼップ・グアルディオラも、今回のバルサ移籍のニュースを受けて、「彼が他の選手と一線を画すのは、そのメンタリティーの強さだ」とし、また「周囲が考えるより足元も上手い」と語っている。

 今年はワールドカップが開催されたため、主力選手の多くはようやくトレーニングに復帰したところで、新加入選手とのコンビネーションを試すのは、まだこれからだ。中盤からイニエスタが去り、前線にリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ビダルという新たな「南米ライン」が誕生することになりそうな新生バルサに、今後どこまで「バルサらしさ」を植え付けることができるか。バルベルデ監督の手腕に注目が集まっている。

文●山本美智子(フリーランス)
 
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