【W杯 今日は何の日?】7月8日「ワールドカップ史上初のPK戦決着」

2014年07月07日 サッカーダイジェストWeb編集部

延長戦でフランスが2ゴール。勝負は決したかに見えたが…。

ワールドカップ史上、初めてPK戦で失敗した西ドイツのウリ・シュティーリケは、「その瞬間、天と地が分からなくなってしまった」と。この直後にフランスのシスも失敗するが、シュティーリケは最後まで戦いを直視することができなかった。 (C) SOCCER DIGEST

 1982年7月8日のセビージャ。エスタディオ・サンチェス・ピスファンでは、西ドイツ対フランスのスペイン大会準決勝が行なわれた。ひと足先に決勝進出を決めたイタリアの対戦相手を決する一戦である。
 
 2年前の欧州王者であり、予選を全勝で勝ち抜いたことでブラジルの対抗馬として優勝候補に挙げられていた西ドイツだったが、コンディション調整に失敗し、大会序盤では低調な内容の試合に終始。アルジェリアに敗れたり、オーストリアと談合まがいの試合を展開して世界中から嘲笑や非難を浴びたが、2次リーグでは徐々に本来の姿を見せ、難敵イングランド、開催国スペインと同組のグループを勝ち抜けてきた。
 
 対するフランスは、ミシェル・プラティニ、アラン・ジレス、ジャン・ティガナといった技術の高いMFが流れるような攻撃を構成。こちらも大会直前に涼しいピレネー山脈の麓で合宿を行なったがために、酷暑のスペインでは試合途中でバテてしまうという準備の失敗があったものの、サッカーの質そのものは最初から高く、58年スウェーデン大会以来の準決勝進出を果たした。
 
 とはいえ、予想では西ドイツが有利と見られていた一戦。実際、17分には早くも、ピエール・リストバルスキーがこぼれ球を詰めてフランスのGKジャンリュック・エトリを破る。ベテランのパウル・ブライトナーがゲームを作り、ペースを握って先制した西ドイツ。ここまでは良かったのだが、リードして安心したのか、早くもチーム全体のペースが落ちてしまう。すると、しだいにフランスの「シャンパン・サッカー」が機能するようになった。
 
 そして26分、プラティニがペナルティエリアで倒され、フランスがPKを獲得。キッカーはもちろんプラティニ自身が務め、難なくGKハラルド・シューマッハーの逆を突いて決めた。以降、西ドイツのマークの甘さもあり、フランスはますます中盤が活性化し、たびたび良い形で相手ゴールに迫っていった。
 
 後半に入っても同様の展開で時間は進んでいったが、60分、大アクシデントが発生する。プラティニのスルーパスで抜け出したパトリック・バチストンに、飛び出したGKシューマッハーが勢いそのままに体当たり。昏倒したバチストンは担架に乗せられてピッチを離れたが、試合はバチストンのシュートがゴールの枠を外れたということだけで、普通にゴールキックから再開された。
 
 終了間際、攻撃参加したフランスの左SBマニュエル・アモロがロングシュートを放つも、クロスバーを叩いてフランスのサヨナラゴールはならず。しかし延長戦に入ってますます西ドイツに迫ったフランスは、92分に右サイドからのFKをマリウス・トレゾールがボレーで叩き込んで勝ち越す。さらにその6分後には、ペナルティエリア手前でプラティニとディディエ・シスがボールを回し、最後は走り込んだジレスがダイレクトでシュートを放つと、ボールはポストに当たってネットを揺らした。
 
【写真で振り返る】ワールドカップの全PK戦(1982準決勝~2014準々決勝)

次ページ歴戦の勇者たちが追い詰められた異様な緊張のなかでの戦い。

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