ネーションズリーグ開幕まで1か月強…スペイン代表は“リスキーな新監督”の下でどう変わるのか

2018年08月01日 山本美智子

初陣となるイングランド戦は9月8日。

L・エンリケ(中央)を新監督に迎えたスペイン代表の今後に注目だ(右はサッカー連盟のルビアレス会長、左はSDに就任したフランシスコ・モリーナ) (C)Getty Images

 ルイス・エンリケのスペイン代表監督就任が発表されたのは、ワールドカップで敗退が決まった7月9日。契約期間はEURO2020までの2年間となっている。

 9月上旬にはいよいよUEFAネーションズリーグが開幕。スペインは現地時間8日にイングランドと、11日にクロアチアと対戦するが、L・エンリケを代表監督に据えるというサッカー連盟の決断について、国内ではどう捉えられているのか。

 よく耳にするのが、「かなりリスキーな賭け」という意見だ。

 L・エンリケは、柔和で対話を好み、メディアへの対応も丁寧に行なっていたジュレン・ロペテギ元監督とは、大きく異なるタイプの指揮官だ。言いたいことははっきり言うが、インタビューや記者会見は好まず、好き嫌いをすぐに顔に出す。

 なにより、現役時代にレアル・マドリーからバルセロナへ移籍した過去や、その後のマドリーを敵視するような発言の数々から、スペイン代表サポーターの最大派閥であるマドリーファン及び関連メディアを、完全に敵にまわしているのだ。

 選手に対しても、みずから歩み寄るというよりは一定の距離を置きたがるタイプで、3年間監督を務めたバルサでの最後のシーズンなどは、そんなL・エンリケとの関係に嫌気がさしたジョルディ・アルバが、クラブを出ていく寸前だったほど。そしてそのジョルディも、現代表の主力メンバーのひとりなのだから不安は拭えない。
 
 シャビに続いてアンドレス・イニエスタも代表チームを去ったいま、新監督が解決すべき問題は山積みだが、そうした状況で連盟がL・エンリケを代表監督に指名したのは、おそらく彼のカリスマ性、強烈なリーダーシップ、そして、最新テクノロジーを駆使したチーム作りの手腕に魅力を感じたからだろう。

 また、メディアなど「外の人間」とは距離を置くL・エンリケだが、チームスタッフやコーチなど「内側の人間」に対しては、ジョークを飛ばし、友情に厚いことで知られている。過去にはバルサの現状にうんざりし、引退まで考えていたジェラール・ピケの考えを改めさせた"実績"もある。

 前述したように決して選手に近い監督ではないが、必要とされたときに発揮するそのリーダーシップとプロフェッショナル性を疑う者はいない。だからこそ、連盟のルイス・ルビアレス会長も、あえてL・エンリケに賭ける冒険策を選んだのだろう。

 リスクを孕んだL・エンリケの監督就任が、今後スペイン代表にどのような変化をもたらすのか。だれもが無関心ではいられない。

文●山本美智子(フリーランス)
 
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