W杯、五輪への強力な武器に!? なでしこ横山久美に見えたゴール前の大きな変化

2018年07月31日 早草紀子

ラストパスのボールスピードが格段に上がった

ブラジル戦で再三チャンスを生み出した横山。岩渕とのコンビネーションも良好だ。写真:早草紀子

 現地29日に行なわれたトーナメント・オブ・ネーションズ第2戦で、日本はブラジルに1-2で惜敗し、2連敗となった。
 
 試合の前半は、日本がリズムを掴んだ。三浦成美(日テレ・ベレーザ)のミドルシュートで始まり、ブラジルの攻撃をいなしながらも徐々に形を作っていく。サイドの籾木結花、ボランチの隅田凛(ともに日テレ・ベレーザ)、三浦らがボールに関わりながらリズムを生み出す。攻撃のスイッチが入った時、その要となっていたのが岩渕真奈(INAC神戸)ともう一人、横山久美(長野パルセイロ)だった。
 
 今年のアルガルベカップや女子アジアカップでも、この二人の相性の良さは見て取れたが、この試合でもそれは健在。フィニッシュまでには至らなかったが、印象に残るシーンがあった。44分、籾木からのパスを受けた横山は、すぐさま岩渕につけた。DFに囲まれながらも岩渕はそれをヒールで流すと、右サイドに走り込もうとしていた横山の足元へ。残念ながらボールがマイナスに入ってしまったため、DFを完全にはがすことが出来なかった。が、ボールがほんの少しサイドに流れていれば、距離を詰めていた横山が間髪入れずに右足を振り抜いていたはずだ。この二人のコンビネーションにはその先を想像させる楽しみがある。
 
 特にさまざまな形でフィニッシュに絡んだ横山にはある変化があった。ペナルティエリア付近でのボールスピードだ。受け手、出し手、そのどちらであっても、ラストパスのスピードが格段に上がった。それは約1年にわたるドイツでのプレー経験がもたらしたものである。
 
「海外の慣れですかね。そのスピードにはまだ慣れていますし、外国人相手にどのパススピードが通用するかというのは少し理解しているので、そういった工夫ができているのかもしれません」(横山)
 
 アメリカでのトレーニングでも、パススピードについては高倉麻子監督からも求められている。ブラジル戦でもそのパスがピタリと収まりさえすれば、好機は生まれていた。まだチーム内でも成功例は多くはないが、日本人らしい巧みさが際立つパスの中に、こうした一本で一気に展開を引き寄せるパワーパスは来年のワールドカップや再来年の五輪といった世界大会へ向けて重要なツールになるはずだ。
 

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