トーレスのデビューを逆手に取った仙台の渡邉監督の采配。「凄い選手が入ったと考えれば…」

2018年07月24日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「鳥栖さんのサポーターのパワーも感じる場所」

F・トーレスのデビュー戦となった試合で、仙台の渡邉監督は采配の意図を明かしてくれた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ17節]鳥栖 0-1 仙台/7月22日/ベアスタ
 
 鳥栖に新加入したフェルナンド・トーレスがホームデビューを果たすと、ベストアメニティスタジアムは凄まじい盛り上がりを見せた。大物助っ人がファーストタッチをすればどよめき、ピッチに入ってから数分の間は前線からプレスをかけただけでも歓声が大きくなった。
 
 そんなサポーターに後押しされるかのように、鳥栖の勢いは増した。F・トーレスに決定機が2度ほど訪れれば、元スペイン代表FWのチャンスメイクから吉田豊がゴールに迫る。鳥栖は強力なストライカーを起点にして、ほとんど相手を押し込んでいた。
 
 しかし仙台の渡邉晋監督にとって、その状況は想定内であり、試合後にはこんなことを話していた。
 
「まず、このスタジアムの雰囲気の特徴。非常にサポーターが近くて、鳥栖さんのサポーターのパワーも感じる場所なので、そういうものは戦う前から理解しようとホテルで話をしていました。そこになびくなと。地に足をつけてしっかり戦おうと。プラス、凄い選手が入ってきていることを考えれば、否が応にも盛り上がるわけですけれども、そこを選手たちはしっかりと自制しながら、やってくれたと思います」
 そして、F・トーレス投入の勢いに吞まれずに守備で耐えると、60分に西村拓真、83分にジャーメイン良を投入。試合後、その采配の狙いを渡邉監督が教えてくれた。
 
「なかなか押し込まれる時間が長くて、なんとか相手の最終ラインをひっくり返したい思いがありました。最初に西村を入れて起点作りと背後への狙い、あとは最後のカードとして、今日のゲームの流れからいくと、ジャーメインなら相手が嫌がるという思いでシステムも変えて、シャドーに彼ら二人を置きました。圧力をひっくり返すという狙い、ゲームの戦術的な狙い、パワーという部分でもそうですし、そういうような思いも込めて、若いふたりを投入したのは間違いありません」
 
 すると87分、「監督からセンターバックとサイドバックの間のスペースをどんどん突けと出る前に言われていた」ジャーメインが右サイドの裏に抜け出してクロスを上げ、ゴール前で西村が合わせて決勝弾。F・トーレスのデビューで勢いが増し、前がかりになった鳥栖を逆手に取り、見事に采配を的中させた。
 
 ただ、渡邉監督は苦笑いを浮かべながら謙遜した。
 
「采配は上手くいくときもあれば、そうじゃない時もたくさんあるので。本当にしっかりとやってくれた選手たちのおかげだと思います」
 
 前節はホームで横浜に8失点をして大敗。まさに、上手くいかなかったゲームだった。渡邉監督は「小さくない波があったので、そういったものを残りの後半戦17試合では減らしていきたい。あとはホームで勝たないと、サポーターの信頼は取り戻せないので、残りの後半戦はサポーターの信頼も取り戻していきたい」とさらなる活躍を誓った。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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