「勝てばドイツ人? 負ければ移民だから?」エジルが怒りの告発、そして代表引退を表明

2018年07月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

あの“問題写真”への想いをついに明かした

ロシアW杯の期間中、常に批判に晒されていたエジル。大会後もバッシングは止まず、ついにその真意と決意を明かした。(C)Getty Images

 ドイツ代表のMFメスト・エジルが、ついに重い口を開いた。アーセナルのシンガポール遠征を前に、自身のSNSで3部構成の一大声明を発表したのだ。
 
 まず最初に題したのは「3の1:エルドアン大統領とのミーティングについて」。今年5月に物議を醸した事件について、その見解を明らかにしたのである。
 
 ワールドカップ開幕前の5月15日だった。エジルは同じドイツ代表のMFイルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)、トルコ代表FWセンク・トスン(エバートン)とともに、ロンドンを訪問していたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とイベント会場で面会。3人はいずれもトルコ系移民のドイツ育ちである。
 
 それぞれの所属クラブのユニホームをプレゼントするなど、会談は和気あいあいとしたムードで進み、最後に何点かの記念撮影を行なった。これがのちに大きな火種となるのだ。エルドアン大統領が所属する公正発展党(AKP)が、すぐさまその模様を大々的にツイッターで公開。言うなれば政治利用されてしまい、大騒動に発展した。さらにギュンドアンが渡したユニホームには手書きのトルコ語で「偉大なる敬意を大統領に」と記されていた。


 
 ドイツ国民の反発を招くや、DFB(ドイツ・サッカー連盟)もこれを問題視。ラインハルト・グリンデル会長が異例のコメントを発表し、「もちろん移民の人びとのルーツを尊重しているし、そうした選手たちが特殊な事情を抱えているのはよく理解している。ただ、こうした代表選手による活動は政治活動に利用されるかもしれないし、その懸念を持たざるを得ない」と苦言を呈したのだ。
 
 ワールドカップ連覇に臨む代表チームに冷や水をかける事件となり、エジルとギュンドアンに対しては「トルコのほうを向いているのか?」「ドイツへの忠誠心が欠けている」「代表チームから外せ!」など批判的な意見が殺到した。そんなバッシングに対してもエジルはいっさい口を開かず、黙々とワールドカップを戦った。しかしご存知の通り、ドイツ代表は1勝2敗の不振に見舞われ、ワールドカップで初めてグループリーグ敗退に終わる大失態を演じてしまう。低調な出来だったエジルへの風当たりはさらに強まり、「エルドアン写真」が蒸し返されていたのだ。
 

次ページ「僕は母の教えをずっと大事にしてきた」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事