【コラム】フランスが示した“理想像”。日本のW杯8強入りは「8年間も待つ必要はない」と言い切れるか?

2018年07月17日 加部 究

フランスは計7戦を盤石に勝ち抜くための理想像を示した

フランスの新星エムバペは持ち前のスピードを活かし、カウンターの急先鋒として存在感を発揮。常に敵の脅威となった。(C) Getty Images

 全7試合を6勝1分けで乗り切ったフランスの効率性が際立った大会だった。
 
 ボール支配率は、準決勝のベルギー戦が40%、決勝のクロアチア戦も39%だったが、相手が攻勢を強めても、スピーディーで精緻なダイレクトパスを連ねて一気にカウンターに転じることが出来る。ラウンドオブ16のアルゼンチン戦の先制PKに繋がるエムバペの自陣からの長駆スプリントに象徴されるように、別格のスピードスターを得て、とりわけ攻撃面での省エネ化が進み、夏の短期トーナメントを勝ち抜くための適材適所が完成した。
 
 安定したGK、何度クロスを入れられてもはね返せるCBがいて、その前では俊敏で疲れ知らずのカンテが奮闘し、ポグバが攻撃のスウィッチを入れる。前線もチームではベテラン格に入るジルー、グリエーズマン、マテュイディが汗を流す一方で、ある程度守備を免除されたエムバペは、ボールを引き出す度に確実に対峙するマーカーを置き去りにした。まるで相撲のぶつかり稽古のように、相手の攻撃を受けながらも、一転して数秒後には窮地に陥れる。守備に閉じこもりがちな姿勢をベルギーの選手たちから批判されたが、実際に準決勝でもフランスは相手の半分しかパスはつながなくても、倍以上もペナルティエリアに侵入し、シュート数、決定機ともに上回った。
 
 ワールドカップがサッカーのトレンドを発信したのは前世紀の話だ。ただし今回のフランスは、計7戦を盤石に勝ち抜くための理想像を示した。守備に人数を割いて負けない土台を築き、少人数での逆襲で脅かす。ボールを奪い取る位置が低くても、プレスをかいくぐりポグバのロングフィードでエムバペを走らせる流れ作業が秀逸だった。
 
 もっともブラジルを下し、フランスへの挑戦権を手にしたベルギーも、やはりカウンターに卓越していた。土壇場で日本を沈めた決勝ゴールは言うに及ばず、ブラジルからもセットプレーとカウンターから2点をリードすると、王国の多彩な攻めを最後まで凌ぎ切った。エデン・アザールを筆頭に、カウンターの刃を突きつけながら、無理をせずにGKまで戻す老練さも見せつけ、同じく2点のリードを引っくり返された日本には良いレッスンとなったに違いない。
 

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