【藤田俊哉の目】ワンプレーが流れを変えたW杯決勝。8強入り実現へ日本が強化すべきポジションは?

2018年07月17日 サッカーダイジェストWeb編集部

決勝戦のVARによるジャッジは今大会を象徴するシーンだった

決勝はVARによる微妙なジャッジもあったが、最終的にはフランスの個がクロアチアを上回った。(C) Getty Images

 フランスの優勝で幕を閉じたロシア・ワールドカップは、いろんな刺激を受けた大会だった。
 
 今大会、私は5週間にわたってロシアで現地取材してきた。テレビの解説の仕事をやらせてもらいながら、最初から最後まで現地観戦したのは、私自身にとっても今大会が初めてだった。移動の連続ですごく疲れたけれど、とても充実した日々を過ごすことができた。
 
 ワールドカップにどっぷりと浸かって感じたのは、あらゆる面でスケールが違うということだ。ホスピタリティなどの運営面もそうだが、メディアの数にも圧倒される。単純にサッカーの質で考えれば、チャンピオンズ・リーグのほうが上かもしれない。スケジュール的にも余裕があって、戦術の徹底においても時間がとれる。しかし、ワールドカップは世界の大陸を勝ち抜いてきた国がひとつの開催地に集まってその国のプライドをかけて戦う。生きるか死ぬかの"死闘"を見ているかのようだった。
 
 だから、ちょっとでもスキを見せれば失点につながるし、たったひとつのプレーで状況が一変してしまう。グループリーグを経てベスト16が出揃った後は、ノックアウト式のトーナメント戦となる。さらに息をもつけぬ攻防の連続となったが、それこそがまさにワールドカップの真骨頂と言える。
 
 ワンプレーがターニングポイントとなったゲームを挙げればキリがないが、決勝のフランス対クロアチアだってそうだろう。
 
 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によってフランスに2点目をもたらしたPKのシーンが、それだ。あのワンプレーによってスコアは2対1へ。立ち上がりからゲームを支配していたクロアチアにとって2度目のリードを奪われることになった。メンタル的な影響は大きかったはずだろう。あれがなかったら……。"たら・れば"の話はあまり好きではないが、あのまま1対1の状況で試合が進んでいく"もうひとつの物語"も見てみたかった。クロアチアの選手、スタッフはもちろん、国民はとくにそう思っていることだろう。
 
 VARはファウルであるかどうか、ジャッジの正確性を高めるために導入されたものだが、レフェリーの笛ひとつで結果が左右するのは、いまに始まったことではない。ただ、間違いなく言えるのは、VARの導入によって、試合の流れが切れることが多くなった。今大会、ワールドカップ史上最多のPK数となったのも、VAR導入の影響によるもの。奇しくも、VARを初めて導入した大会において、そのVARによるジャッジが決勝戦の行方を大きく左右したのだから、世界中のメディアでも大きな議論を呼んでいるのも当然だろう。今大会を象徴したシーンだったとも言える。
 

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