W杯での"数字"が示す日本代表の実力。「長所」のパスだけでなく「短所」のデュエルでも…

2018年07月13日 二宮寿朗

ボール保持率を高めて、パスを武器にゴールへ向かうのが「最適解」だ

グループリーグ3試合では保持率、パス総数、パス成功率で相手を上回った日本。アイデアある攻撃は通用した。(C)Getty Images

 日本は4年後に向けて、さらにパスサッカーを磨くべきか? 結論から先に申せば「イエス」である。ボールを保持してパスで攻め立てゴールに迫る。ボールを持つことイコール、相手にボールを持たせないこと。ボールを持って攻め立てれば防御にもなる。技術力、敏捷性、組織力……日本の長所を活かす意味でもこの路線が「最適解」であることは今回ロシアの地で証明された。
 
 FIFAのデータを引き出してみると、グループリーグ3試合では保持率、パス総数、パス成功率ともに対戦相手を上回っている。
 
 コロンビア戦は開始早々、相手に退場者が出る展開でもあり、日本の保持率は59%に及んだ。パス成功本数は565本中491本で、87%の成功率。対するコロンビアは352本中290本で82%だった。
 
 2度リードされながら追いついた2戦目セネガル戦の保持率は54%。パス成功本数は449本中376本で84%の成功率だった。一方、セネガルは337本中266本で79%にとどまっている。
 
 このセネガル戦をフォーカスしてみたい。縦に速く攻めようとするセネガルのスタイルを考えれば、予想の範囲内のデータではある。ただ西野ジャパンは「長所」だけで勝負しているわけではなかった。
 
 スプリント本数はセネガルの356本に対し、日本は367本で上回った。ボール奪取回数こそ39対44で下回ったものの、フィジカル自慢のセネガル相手に奮闘している。
 
 走り負けず、当たり負けず――。「長所」を持ち味にしつつも、すべての要素を引き上げてきたことが躍進につながった。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督がしつこく植えつけてきたデュエルの部分も、十分にエッセンスとして入っていた。
 
 そして注目したいのはベルギー戦のデータである。2点をリードしながら3点を奪われての逆転負けだった。グループリーグの戦いとは打って変わってボール保持率は44%とベルギーを下回った。パス総数、成功率も同様だ(日本は450本中374本、83%、ベルギーは621本中540本、87%)。
 
 だが、日本は「長所」を打ち出せずとも、真っ向勝負できた。スプリント本数は380対333本、ボール奪取回数は40回対28回といずれもベルギー相手に大きく上回った。ここを何とか「長所」に結びつけたかったが、勝利にはつながらなかった。
 

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