恩師からは痛烈な指摘も… 関根貴大がベルギー行き発表前に古巣で垣間見せていた苦悩

2018年07月13日 佐藤亮太

「自分にできることと、できないことが整理されていない」

昨季所属したインゴルシュタットで思うように出場機会を得られなかった関根は今季、シント=トロイデンへの移籍が決まった。新天地での活躍に期待したい。(C) Getty Images

「新たな環境で、新たな挑戦をし、新たなモチベーションを得られると思い選びました」
 
 今月10日、ドイツ2部インゴルシュタット所属のMF関根貴大のベルギー1部シント=トロイデン(以下、STVV)への期限付き移籍が発表された。

 
 実はこの約3週間前の6月中旬、関根は古巣・浦和レッズの練習に参加していた。下部組織出身の生え抜きサイドアタッカーはミハイロ・ペトロヴィッチ監督の信頼を得てリーグ107試合に出場。13得点を挙げた。また浦和最後の得点となった17年7月1日のリーグ17節、ホームでのサンフレッチェ広島戦。4-3の決勝点となったアディショナルタイムでの5人抜きゴールは語り草となっている。
 
 その関根が練習場にいるらしいとの噂を聞きつけ、平日にもかかわらず50人以上のファン・サポーターがその姿を一目見ようと見学に訪れるなど、相変わらずの人気だった。
 
 そんななか、関根に向けてサポーターからこんな声があった。
「そのまま浦和にいてよ」
 
 その声を耳にした関根は「嬉しいけど、ちょっと複雑に感じる。やっぱり試合に出ていないから」とポツリと答えた。
 
 昨シーズン、インゴルシュタットでの出場は公式戦1試合のみ。そう言いたくなる気持ちは痛いほど伝わった。関根が抱く不甲斐なさを肌で感じていたのが年上の同期で仲の良いGK岩舘直だ。
「関根は期待を抱いてドイツに渡った。試合に出られなかったのは実力とは違った要素があったかもしれない。ただ思ったようなプレー環境を得られなかったのは関根のサッカー人生にとって初めてのこと。やりきれなさはあったはず」と斟酌した。
 
 そう感じたのは岩舘だけではなかった。浦和レッズジュニアユース時代の3年間、浦和ユース時代の1年間、関根を指導した池田伸康コーチもそのひとりだ。練習参加最終日、関根を呼び止めた池田コーチはこんな言葉を投げかけた。
 
「この夏、どうなるか分からない。ただ、どこに行っても腹をくくってやってこい。コミュニケーションは大事。当然、言葉の壁はある。ただ話せないなりに、やることはあるはずだ」と。
 
 今回の移籍を予期したような言葉だが、池田コーチはなぜ、この言葉を投げかけたのか。それは、池田コーチが関根との会話のなかで、関根自身「自分にできることと、できないことが整理されていない」と感じたからだ。
 
 具体的にはどういうことか。
 
 池田コーチの言葉をまとめると、何かを目標に定めた際、それを達成するために何をしなければならないのか、逆算して考えていなかったということ。関根に当てはめるなら、試合に出るために、特長のドリブルをチームメイトや監督に分かってもらうための惜しみない努力を果たしてやっているのか、という厳しい指摘だった。
 

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