負け知らずのデュエルでサイドを制圧!酒井宏樹がもたらした別次元の安定感【西野ジャパン23戦士のストーリー#8】

2018年07月13日 河治良幸

名門マルセイユでレギュラーを勝ち取った経験が、大きな自信となった

酒井宏は左の長友とともに全4試合に出場して最終ラインを支え続けた。(C)Getty Images

 シーズン中に痛めた左膝の影響で、5月下旬にスタートした国内合宿では控え組に回ることも多かった。西野新体制となって3-4-2-1が導入されると、右ウイングバックの位置で原口と天秤にかけられ、その後、4バックに回帰した当初も、右サイドバックで優先的に使われたのは酒井高だった。
 
 それでも、腐らず本番に合わせてコンディションを整えた酒井宏は、最終的に右サイドバックのファーストチョイスとして、ロシアの地で堂々たるパフォーマンスを見せたのだ。
 
 前回のブラジル大会で出番がなかった酒井宏にとって、コロンビア戦がワールドカップデビューとなったが、憶することはなかった。対面のイスキエルドの突破を許さず、ゴール前でも身体を張っただけでなく、後半には高い位置で崩しの一翼を担い、勝利に貢献。相手が早々に10人になったとはいえ、その積極的な姿勢は高く評価できた。決勝点につながるCKも、彼がエリア内に侵入して放ったシュートによってもたらされたものだ。
 
 続くセネガル戦では、快速マネをほぼ完璧に封じ込めた。
 
「フランスでの2年間が、ここで活かされたのなら嬉しい」
 
 名門マルセイユで揉まれながらレギュラーを勝ち取った経験が、大きな自信のバックボーンとなったのは間違いない。苦しい時期もあったが、それも成長の糧と常に前向きに捉えてきた。
 
 西野監督の就任後、ディフェンスでは1対1のデュエルを大切にしながらも、数的優位を作って囲い込むやり方が、まずは念頭に置かれた。それでもライン際でのデュエルで高い勝率を誇る酒井宏の存在によって、CBやボランチが引きだされずに済んだのは確かだろう。クロスの精度も著しく向上した印象だが、その進化については、「周りのサポートがあるので、落ち着いて上げられている」と説明する。
 
 スタメンを6人変更したポーランド戦でも、酒井宏の名前がメンバー表から外されることはなかった。ベルギー戦を含め、4試合連続フル出場。左の長友とともに、日本の躍進にはなくてはならない男だった。
 
取材・文●河治良幸
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