フランスに漂い始めた特別な空気。レ・ブルーは20年ぶりの頂点に辿り着けるのか【ロシアW杯】

2018年07月07日 結城麻里

なにかデカいことができるかもしれない

アルゼンチンに続いてウルグアイも撃破したトリコロール軍団。20年ぶりの歓喜まで、あとふたつ! (C)Getty Images

 突然、クラクションが鳴った。
 
 試合終了からおよそ10分後だった。真っ青な空の下、フランスのあちこちの道で車がクラクションを鳴らしはじめたのだ。まだどこか遠慮がち、だが、たしかにしばらく鳴り響いていた。
 
 同じころ、この日パリ地方に唯一設けられていたノワジー・ル・グラン(パリ郊外)のファンゾーンでは、詰めかけた観衆から聞き覚えのあるメロディーが沸き起こった。
 
「オンネ・アン・ドゥミ! オンネ・アン・ドゥミ! オンネ、オンネ、オンネ・アン・ドゥミ!」
 
 歌詞は「俺たち準決勝だ!、俺たち準決勝だ!、俺たち、俺たち、俺たち準決勝だ!」という意味なのだが、実はこのメロディーは20年前のものと同じ。1998年、自国開催のワールドカップで初優勝を飾った際、大衆が「オンネ・レ・シャンピオン! オンネ・レ・シャンピオン! オンネ、オンネ、オンネ・レ・シャンピオン!」(俺たちチャンピオン!、俺たちチャンピオン!、俺たち、俺たち、俺たちチャンピオン!)と大合唱し、フランス中を覆い尽くした。
 
 そうなのだ。フランスではどこか、特別な空気が漂いはじめている。

 
 準決勝進出という目標達成から一夜明けた7月7日、全国スポーツ紙『L’Equipe』は10面に「7月16日にシャンゼリゼで会おう!」というドッキリ見出しを掲げた。
 
 よく読むとこの見出しは、マルセイユから準々決勝のウルグアイ戦に駆けつけた学生の言葉の引用。彼はこう語っている。「僕の目的はレ・ブルー(代表チームの愛称)と一緒に帰国して、7月16日(決勝の翌日)にシャンゼリゼで再会すること! 20年前は経験できなかったし、2000年(EUROで優勝)もまだ小さすぎたから、そうなったらサイコー!」。
 
 サポーターだけではない。当の選手たちの言葉にも変化が表われている。
 
 ウルグアイ戦勝利のあと、ポール・ポグバは「俺たちは幸せだ。(この勝利を)味わっているよ。でも俺たちがここまで来たのは、船から降りるためじゃないぜ。まだ続ける。ワールドカップ(優勝)? 俺たちはそれを信じているし、獲りたい」と言い切った。マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたアントワーヌ・グリエーズマンも、「すごく幸せだよ。でも僕たちの目標はあくまで最後まで行くこと」と、さらり断言。キリアン・エムバペは、「なにかデカいことができるかもしれない」と語った。

次ページチームには舞い上がるところがいっさいない

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事