西野Jに生まれた“空気感” なぜ日本はビハインドでも意気消沈しなかったのか?

2018年06月26日 サッカーダイジェストWeb編集部

「練習は自分が出るというプライドのぶつかり合い。でも試合になれば勝ちに行く姿勢を出せている」(東口)

グループリーグ2試合で粘り強い戦いを見せた西野ジャパン。チームにはこれまでにない一体感が漂う。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 ゴールを決めた瞬間、MF乾貴士はベンチに向かって走っていた。アシストをしたDF長友佑都が抱きつく。そして乾を中心に、ベンチメンバーを含めた大きな輪が出来上がった。それは西野ジャパンの象徴的なワンシーンだった。一夜明け25日。MF宇佐美貴史とGK東口順昭はチーム内の雰囲気を明かした。

「サブの選手も声を出している。"苦しい時にベンチを見ろ!"という声や"全員で戦っているぞ!"という声も頻繁に起きている。スタートの選手よりもサブの選手たちの方が出している。試合中、練習中もそうだけど、"出ていない選手が良い空気を作れるかどうかで結果が変わる"とスタッフ陣からも言われているんで。いろんな感情を押し殺してチームのためにしないといけないのは全員が分かっている。そこは問題なくできていると思う」(宇佐美貴史)

「練習は自分が出るというプライドのぶつかり合い。でも試合になれば誰が出ても出ている選手を応援するし、勝ちに行く姿勢を出せている。メリハリがあると感じている。(今までは)もっと自分が出たいと思っていたし、それを出す選手もいた。今はそれよりもチームが勝つために、鼓舞する。それがベンチで出来ているから途中から入ってもスンナリできているんだと思う。雰囲気作りはマキ(槙野智章)が積極的に"声を出していこう"と話している。そういうのをキッカケに一体になっている」(東口順昭)

 西野ジャパンが始動してから1か月超。セネガルに追いつけた要因は23選手の想いが一つになっているからだけではないだろう。だがチームが立ち上がって以降、急速にチームビルディングをしなければならないなか、選手間の話し合いは、かつてないほど頻繁に行なわれてきた。主力もサブもベテランも若手も関係ない。当初はおとなしかった若手も声を発するようになるなど、全員が意見できる空気感が今のチームにはでき上がっている。

 そして、そこで決められた方向性は、スタメンに選ばれた選手たちは、いわば自らの意見や考えを汲み取った"代弁者"だ。出られなかった選手は自らのエゴを押し殺して必死で背中を押す。ピッチで戦う選手たちはベンチの選手たちの分まで責任を背負う。その絶妙なバランスが、ビハインドでも意気消沈しない雰囲気を作っていたのではないか、と感じる。そういえば乾は試合後こう明かしていた。
 
「前半の最初は(左サイドを)使えていなかった。皆、こっちを見られていなかった。それでベンチから(本田)圭佑くんとか槙野くんが"左サイドをもっと使えるぞ"と言ってくれた。それで皆が使ってくれるようになった」

 リードされた状況から追いつき、引き分けに持ち込んだのは02年日韓ワールドカップのグループリーグ・ベルギー戦以来2度目のこと。全員でもぎ取った勝点1である。
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