戦前の予想を覆した「年功序列ジャパン」の快進撃。けれど、日本サッカー全体の経験値は…【ロシアW杯】

2018年06月26日 吉田治良

ゲームの流れを引き寄せられたのは、日本のほうが“場馴れ”していたからだ

長谷部や本田といったベテランの豊富な経験が、この好結果をもたらしたと言っても過言ではない。(C)Getty Images

 セネガル戦の終了直前、あらためてピッチに立つ日本代表の顔ぶれを見て、時間が止まってしまったような感覚に陥った。
 
 川島永嗣、長友佑都、長谷部誠、岡崎慎司、本田圭佑。11人中5人が8年前の南アフリカ・ワールドカップのメンバーだったからだ。当時小学3年生だった子どもが高校生になった今も、彼らは日本代表の主力であり続けている。
 
 さらに、この時点でCBの昌子源とボランチの柴崎岳、途中出場の宇佐美貴史を除く8人が、前回のブラジル大会も含めたワールドカップ経験者だった。
 
 もとより「年功序列ジャパン」などと揶揄されていたチームだが、ここまで"ワールドカップ経験者率"が高い国は、今大会でも他ではメキシコやスイスなど数えるくらいだろう。
 
 悪いことだとは思わない。

 むしろ戦前の予想を覆すここまでの順調な歩みは、ベテランの豊かな経験値によってもたらされたと言ってもいい。
 
 セネガル戦では、立ち上がりにアフリカ勢特有のスピードをまざまざと見せつけられながら冷静さを失わず、むしろ余裕を持ってゲームの流れを引き寄せている。これまでの日本代表では滅多に見られなかった試合運びができたのは、おそらく日本のほうが"場馴れ"していたから。テンションのアップダウンが激しかったセネガルに、ワールドカップ経験者はひとりもいなかった。
 
 ただ、だからこそ勝っておきたかった。

 先制されて追いつき、一度は突き放されてもしぶとく食らいついて勝点1をもぎ取った戦いぶりは、間違いなく称賛に値する。しかし、勝てるチャンスを逃したという印象がそれを上回るのだ。
 
 ここでグループリーグ突破を決めていれば、第3戦はメンバーを落とし、主力のベテランを休ませることもできた。対戦相手のポーランドはすでにグループリーグ敗退が決まったとはいえ、手ぶらで祖国に帰るつもりなどないはずだ。やはり日本代表もベストメンバーで戦うべきだろう。
 
 見据えなくてはいけないのは、決勝トーナメント1回戦だ。仮にグループリーグを突破すれば、次の相手はベルギーかイングランド。どちらも余裕でベスト16進出を決めており、順位決定戦となる最終戦では、互いに控えメンバー中心の構成となるはずだ。
 

次ページベスト16、さらにはそれ以上の成果を残すことが最優先の目標だが…

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