自国メディアも非難… 逆転劇を呼んだスイス代表戦士の“双頭鷲ポーズ”が物議醸す

2018年06月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

根深い民族間の問題を再燃させる行為!?

スイスの逆転劇を演出したジャカ(左)とシャキリ(右)。しかし、2人がゴール後にやったパフォーマンスが物議を醸している。 (C) Getty Images

 6月22日のロシア・ワールドカップのグループ2節のセルビア戦、スイスを逆転勝利に導いたのは2人の主軸だった。

 開始わずか5分でアレクサンドル・ミトロビッチにヘディング弾を決められたスイスだったが、52分にゴール前でのこぼれ球に反応したグラニト・ジャカが豪快なミドルシュートを蹴り込んで同点とすると、試合終了間際の90分に味方のスルーパスに抜け出したジェルダン・シャキリが相手GKとの1対1を制して逆転に成功した。

 ともに国内の名門バーゼルで研鑽を積んだジャカとシャキリの活躍で勝利を手にしたスイスだったが、試合後に最も話題となったのは、そんな2人のゴールパフォーマンスだ。

 2人は得点を奪った直後、スタンドへ向けて、胸の前で手をチョウのようにかざすポーズを披露。これはアルバニア国旗に描かれる双頭鷲を意味するものであり、政治的意図があるとして、物議を醸しているのだ。

 この問題は、実に根深い。バルカン半島の内陸部に位置するコソボは、多くの死傷者と難民を生み出した民族紛争の末、2008年にセルビアからの独立を宣言。しかし、いまだセルビア国内にはこれを認めないとする声が多い。

 この民族間の対立は、サッカーにも飛び火。2014年10月14日に行なわれたEURO予選のアルバニアとセルビアの一戦では、コソボの独立を巡って両サポーター間で乱闘騒ぎが起き、没収試合になっていた。

 コソボの人口の9割はアルバニア系であり、1990年代にはセルビアから抑圧を受けたことで、多くの人々が欧州各国に渡った。なかでもスイスには、最も多い約20万人が流入したといわれている。

 かくいうジャカとシャキリも、コソボの血が入ったアルバニア系移民だ。

 前者は両親がコソボより移民してきたアルバニア人で、兄のタウラントはアルバニア代表としてプレーしている。後者もコソボ生まれのアルバニア系。ゆえに2人は、コソボを支持するアルバニア国旗を意味するポーズをやってみせたのだろう。

 スイス紙『Neue Zürcher Zeitung』は、2人のゴールパフォーマンスについて、「ジャカとシャキリの政治的感受性が欠けた行動」と銘打ち、「そのゴールパフォーマンスでセルビア人を挑発。彼らは、すでに終わったと考えられていた問題に火をつけた」と、殊勲の2人をあえて非難した。

 試合後、国際サッカー連盟(FIFA)の公式会見でポーズの意図を問われたシャキリは、「個人的な想いはあるが、今はそれを言うつもりはない」と沈黙を貫いている。

 FIFAは政治介入を認めていないため、今後、ジャカとシャキリには何らかの処分が下される可能性があるともされている。はたしてスイスを救った2人は、今後もロシアのピッチに立ち続けられるだろうか。

次ページ【動画】シャキリが見せた問題のゴールパフォーマンスはこちら

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事