西野ジャパンが内包する"温度差” ブラジル大会の「リベンジ」では一体感は生まれない

2018年06月19日 佐藤俊

ブラジル大会を経験していない選手は「リベンジ」がピンとこない

「リベンジ」を目的に置くと、全員が同じ方向を向き、一体感を生み出すのは難しくなる。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 一体感は必要だ。
 
 それは、チームに最初からあるものではない。長い合宿生活の中で自然発生的にうまれてくるものでもない。
 
 一体感を生むには、目的が明確であることが大前提だ。
 
 チームの全員が「やろうぜ」と共感できる目的がないとチームはひとつになれなし、一体感を高めることができない。
 
 日韓大会の時は、中山雅史、秋田豊の存在が大きかった。
 
 若いチームにあって、いじり、いじられるふたりは、若いチームに緊張感と明るさを与えた。その姿勢に感銘を受け、あの人たちがあれだけやっているのだからと若い選手たちは奮い立った。ゴンさんたちのために、という目的が若いチームをひとつにしていった。
 
 南アフリカ大会で結果を出した時は、予選で終わるだろうという下馬評を覆して、「世間をあっと言わせる」のが選手たちの大きな目的になっていた。その目的達成のためにカメルーン戦の勝利にすべてを賭け、選手たちはその関門を越えた。
 
 負けていればドイツ大会のようになっていただろうが、カメルーン戦の勝利によってそれまで不安定なシステムが自信のシステムになり、彼らの拠り所になった。チームの全員が「このやり方でいい」と確信し、目的を果たすべくチームに一体感が生まれ、高まっていった。
 
 ブラジル大会は、「世界を驚かす」という目的が明確だった。
 
 初戦のコートジボワールに勝てば南アフリカ大会のような流れを作ることができただろう。しかし、逆転負けを喫して自信が萎むのと同時にチームは目標と目的を同時に見失ってしまった。
 
 では、ロシア大会に挑むチームはどうだろうか。
 
 チームからはマグマが火口から出ていくような熱い盛り上がりは感じられない。大人しい選手が多いチームの気質がそうさせているのか、淡々と大会を迎えている感じだ。
 
 チームから今ひとつ一体感が感じられないのは、目的が統一されていないからだろう。例えば前回のブラジル大会に出場した選手たちは、今大会を「リベンジ」と捉えた発言をしている。この大会の目的をそこに置いてしまうと全員が同じ方向を向き、一体感を生み出すのは難しくなる。現チームにはブラジル大会を経験していない選手が半分ほどおり、ブラジル大会を経験していない選手たちにとってみれば「リベンジ」はピンとこない目的だからだ。
 

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