【岩政大樹】勝つことで見えたものと見えなくなるもの。パラグアイ戦はワールドカップとは全くの別物だ

2018年06月13日 岩政大樹

パラグアイはミドルパスをことごとくミスしていた

日本の守備が機能したのは、パラグアイのパスミスに助けられた部分もあった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 パラグアイとのワールドカップ前最後の強化試合に勝利し、チームは手応えを得たのでしょう。選手たちの表情が一変したところを見ると、この日の戦いをベースとしてコロンビアとの試合に挑むこととなりそうです。
 
 スタメンを見た時に気になったのは2点。まず、酒井宏樹選手のコンディションです。パラグアイ戦でも後半からの出場となり、この3試合で一度もスタメンでプレーしていないことになります。怪我がまだ完全に癒えていないのが原因だと思われますが、一度も90分間プレーをしていない状況でコロンビア戦に起用するのでしょうか。ワールドカップでは交代は3人しか使えません。ディフェンスラインに交代枠を使いたくないのは明白で、西野監督はどう決断するでしょうか。
 
 もう1点は、ボランチの立ち位置です。柴崎選手が右、山口選手が左でプレーしていました。これが、この試合での他の選手との兼ね合いなのか、ワールドカップを想定したものなのかは分かりません。ただ、これまでパスの配給役としてプレーしていた大島選手は左でプレーしていました。これは想像でしかありませんが、もしかしたらボランチの組み合わせは長谷部選手と大島選手である程度決めていて、そこから勝っていれば大島選手を山口選手に、負けていれば長谷部選手を柴崎選手に変えるプランを描いているのかもしれません。
 
 パラグアイはロシア・ワールドカップ出場を逃していることから、若い選手たちで臨んできました。グラウンド状態が悪かったのもあったと思いますが、ミスが散見され、チームとしても個人としても成熟しているとは決して言えない相手でした。試合の中で、少し立ち位置をずらしたりする工夫こそ見られましたが、精度が伴わず、日本の選手たちが困るような場面は少なかったと思います。
 
 そのため日本は、最初は中盤にブロックを敷き、コンパクトな状況を作ってからプレスに行く狙いで試合に入ったと思われますが、徐々に高めからアプローチを仕掛けていくようになりました。香川選手と岡崎選手は背中でパスコースを切りながら、機を見て相手センターバックにプレスに行く仕事をうまくこなしていましたし、乾選手も徐々に高い位置を取り始めた相手のサイドバックに吊られるのではなく、間を取りながら高めに残って守備をできていました。

 それによって、日本のディフェンスライン前では数的不利な状況になる場面もありましたが、そこに送られるパラグアイのミドルパスがことごとくミスとなったため、この日はこれで良かったと思います。
 

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