【小宮良之の日本サッカー兵法書】 ピッチ上では全ての責任を背負い、勝利だけを追求する選手を求む!

2018年06月12日 小宮良之

上層部の腐敗のなかで世界を制したスペイン代表

周囲の喧騒に惑わされることなく隆盛を極めたスペイン代表。選手がピッチ上のことだけに集中し、自らの力を余すことなく発揮した結果の偉業だった。写真は2010年W杯。 (C) Getty Images

「勝つことで、自信を取り戻したかった」
 
 ガーナ、スイスに連敗した後、主将である長谷部誠は、こう洩らしている。それは本音だっただろう。サッカーは勝つことで、劇的に状況が変わることがあるからだ。
 
 ロシア・ワールドカップを前に、西野ジャパンは酷評に晒されている。現体制は「ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を解任し、のさばっている」という印象が付いてしまった。何かを発言すれば、その言葉尻を捉えられる有様だ……。
 
「こんな代表なら、負けてリセットした方がいい!」
 
 世間では、とんでもない意見まで流布されている。
 
 しかし、勝利を掴むことで悪い流れは止まる。潮目が生まれる。良い流れに乗ることができれば、行く手に道は拓ける。サッカーとは、そういうスポーツだ。
 
 結局のところ、勝つか、負けるか、が物を言う。選手は勝つことで良さを引き出せるし、悪さを隠せる。勝利への慢心は危険だが、負け続けるチームは、負けることに慣れてしまう。これでは、未来はない。
 
 ワールドカップで日本代表が負けることは、予想以上のダメージを日本サッカー界にもたらすだろう。多くのメディア媒体を潰し、スポンサーは撤退を余儀なくされ、一般のファンは寄りつかなくなる。サッカーはメジャースポーツから、マイナースポーツに転落する……。
 
 それを回避するためにも、日本サッカーにとって、ワールドカップは不退転の戦いとなる。何としても、勝利を手にしなければならない。負けてはならない、ではなく、勝利するためのアプローチが必要になる。
 
 長谷部を中心に、選手たちが奮起するしかない。
 
 上層部に問題があることは間違いが、それは現場での敗戦の理由にはならないだろう。
 
 スペイン・サッカー連盟はここ数年、汚職まみれだった。アンヘル・マリア・ビジャール会長は、ありとあらゆる利権を食い物にしたのである。
 
 息子に会社を作らせ、そこに代表試合開催に関する権利を全て譲渡し、放映権料やチケットセールスなどをピンハネし放題。その他、スポンサーからの巨額の賄賂を受け取った。また、チャリティーゲームでの募金までごっそりポケットに入れたという(昨年夏に逮捕、起訴)。

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