【釜本邦茂】あの程度の運動量やビジョンしかないのなら本田のトップ下はないよ

2018年06月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

日本の怖さのない攻撃は、相手に余裕を与えるばかりだった

スイス戦ではトップ下で起用された本田だが輝きを放てず。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真)

 ロシア・ワールドカップもいよいよ開幕まで、あと5日となった。自国が出場する各国のファンも、いよいよ本番に向けて盛り上がっている時なんじゃないかなあ。直前のテストマッチの出来に、ああだこうだと議論してみたりね。スイス戦は、小さなスタジアムに超満員の観客が詰めかけていたけど、多くのスイス・ファンは自国のパフォーマンスに「よし、これなら行ける」と自信を持ったんじゃないかな。その一方で、日本は……。

 全員が守備をしっかりやろうというコンセプトの下で、日本の選手たちもきっちりと相手を追い回していたから、2点を取られはしたけど、守備に関してはまずまずだったと思うよ。もちろん2失点は検証の余地があるし、とりわけ最初の失点は相手の個のスピードに対して予測が悪く、対応が後手に回ってしまった。ただ、それ以外のところでは無難にやれていたと思うし、なんとか粘り強くできていたと思う。

 問題は攻撃面だ。まったく打開策というものが見えず、なんとも言いようがない空気が漂ってしまっていた。端的に言えば、攻撃に鋭さがない。ゆっくりパスを回すところから急にテンポを上げるとか、クロスもただ上げるんじゃなくて、速いタイミングでニアサイドにスピードのあるボールを入れるとか、相手の意表を突くような攻めがまったくない。

 あれでは、守備に圧力が掛からないから相手にも余裕を与えてしまうばかり。日本は大したことをやってこないから、後ろはこれくらいの人数がいれば大丈夫だろうという感じで、前のほうはあまり必死に守備をする感じでもなかったよね。

 スイスからすれば、時折ミドルシュートが飛んでくるくらいの攻撃に怖さを感じることなんて皆無だっただろう。日本は、ハーフラインから敵陣の10~15メートルくらいに入ったあたりでパスを回すのが精一杯で、アタッキングゾーンの中に相手を脅かすような効果的なパスを入れる場面はほとんどなかった。
 
 逆に日本の攻撃陣は、ディフェンスに相当力を入れ過ぎてしまい、仕掛ける力を失っていた印象を受けた。キックの精度も悪いし、プレー一つひとつにまるで凄みが感じられなかった。

 日本の選手たちは30~50メートルくらいの中長距離のキックの精度を高めるトレーニングをもっとやったほうがいい。クロスにしても、シュートにしても、誰に合わせる、あるいはどこを狙うという意図のあるボールを蹴る選手が見当たらない。それこそ、ベッカムなんかはそれだけで大金持ちになったような代表格の選手だけど、日本の選手たちにもベッカムやピルロとは言わないまでも、もう少しキックの精度を上げてほしいね。
 

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