【W杯キープレーヤー解体新書】ジョアン・モウチーニョ|中盤と前線をつなぐ質の高いリンクマン

2014年06月22日 ロベルト・ロッシ

欠場すれば中盤のダイナミズムは低下し、前線の孤立化を招く。

C・ロナウドやペペほど絶対不可欠ではないが、モウチーニョは不動の存在だ。 (C) Getty Images

 質の高いインサイドハーフで、テクニックとダイナミズムを武器とする。スピードやアジリティーは決して高いレベルにあるとは言えないが、持久力はトップレベル。優れた戦術センスを生かしてプレーの展開を読み取り、ピッチをワイドに動き回って積極的にボールに絡み、攻撃を活性化させる。前線に攻め上がるタイミングも的確で、良質なラストパスを供給してフィニッシュに絡む回数も少なくない。
 
 ヴェローゾ、メイレレスとともに構成する中盤では最も攻撃的に振る舞う。センターライトをスタートポジションとしながらも行動範囲は広く、しばしば敵の2ライン(DFとMF)間まで顔を出す。アンカーのヴェローゾは攻撃にリズムを生む司令塔、左インサイドハーフのメイレレスが周囲をサポートするバランサーだとすれば、モウチーニョはその2人の前で中盤と前線をつなぐリンクマンの役割を担っている。
 
 守備の局面では積極的に敵のボールホルダーにプレッシャーをかけるだけでなく、相手が4-3-3など3MFのシステムを採用している場合には、敵のアンカー(もしくはレジスタ=司令塔)をケアする仕事もこなす。危険なパスコースを切りながら相手にプレッシャーをかけ、的確な読みからインターセプトを狙う。
 
 C・ロナウドやペペほど絶対不可欠ではないものの、不動のレギュラーであるのは間違いない。実際、控えに彼ほどのクオリティーを備えたMFは見当たらない。欠場すれば中盤のダイナミズムが低下し、前線の孤立化を招くだろう。崩しの局面で両ウイングの負担が増すのは必至で、また中央の攻撃に厚みがなくなるため、相手にとっては守りやすくなるはずだ。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p91より抜粋。
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