【W杯 伝説への挑戦】メッシはマラドーナを超えられるか|「魅惑の4人組」がイラン戦で爆発か

2014年06月21日 チヅル・デ・ガルシア

イラン戦とナイジェリア戦で理想のプレーを。

トレーニングの合間にアグエロと言葉を交わすメッシ。イラン戦ではさらなる攻撃陣の爆発が期待できそうだ。(C) Getty Images

 ネイマール、リオネル・メッシ、クリスチアーノ・ロナウド――。自他ともに認めるブラジル・ワールドカップの主役候補の3人だ。彼らが挑むのは、ただし今大会の主役の座という限定的な栄誉ではないだろう。
 
 いずれもサッカー史に名を刻みうる特別な才能であり、ブラジルのネイマールはペレ、アルゼンチンのメッシはマラドーナ、ポルトガルのC・ロナウドはエウゼビオという、それぞれの国のレジェンドを超えうるカリスマだ。
 
 ブラジルの地で、いわば伝説に挑む3人の天才。その闘いに密着してお届けしよう。
 
――◆――◆――
 
 初戦のボスニア・ヘルツェゴビナ戦は、開始早々のオウンゴールで先制し、システムを変えた後半にギアを上げ、アルゼンチンは勝利を収めた。この試合のためにサベーラ監督が「迷いに迷った挙句決めた」という5-3-2の布陣は、自陣ゴール前で複数の選手がぶつかり合ってしまうほどの組織の混乱をきたし、2トップのメッシとアグエロは効果的なサポートを得られず空回りする結果になった。
 
 そして後半、中盤にガゴ、前線にイグアインが入り、お馴染みの4-3-3の布陣からようやく反撃を開始。メッシは得点を決めた瞬間、笑顔を見せるどころかまるで怒りを爆発させたような表情で雄叫びを上げた。
 
「いや、別にそういうわけではないよ」
翌日の会見で、ゴール後の叫びが何かを訴えていたのかと聞かれ、メッシは照れ臭そうに語った。
「それまでなかなか自分の思い通りのプレーができなかったから、その鬱憤を晴らしただけさ」
 
 ボスニア戦で明らかに失敗した5バックの布陣についての意見を求められると、非常に明快な答が返ってきた。
 
「僕たちはアルゼンチンなんだから、対戦相手(のプレースタイル)を気にしているわけにはいかない。もちろんゲームの中では状況は変化するから、それに応じていろんなシステムを使うこともあるけど、個人的にはまずゲームの主導権を握るのが重要だと思っている」
 
 監督に反旗を翻したわけではない。現在のアルゼンチン代表は、サベーラ監督自身がかねてから「私はいつだって選手たちの意見に耳を傾けるようにしている」と言っているように、チーム内におけるコミュニケーションが非常に円滑な状態にある。とはいえ、戦術とシステムを決める最終的な決定権は監督にある。
 
「作戦を決めるのはアレハンドロ(サベーラ監督)の仕事。(ボスニア戦では)監督も前線に選手が不足していることに気づいた。ピパ(イグアイン)が入ったことでより多くの攻撃オプションができたんだ。前半は僕自身もなかなかボールを持てなくて、パスが回ってきても相手のゴールが遠かった。僕たちは引き気味の態勢でプレーすることには慣れていない。後半は僕たちがやりたい形で、僕たちが力を発揮できるやり方でプレーできた」
 
 次のイラン戦ではメッシが望むとおり、予選で圧倒的な破壊力を発揮したクアトロ・ファンタスティコス(魅惑の4人組)のメッシ、イグアイン、アグエロ、ディ・マリアが、揃って先発となりそうだ。もはや監督以上にチームを引っ張る力を発揮したメッシには、当然ボスニア戦以上の活躍が期待される。
 
「イラン戦とナイジェリア戦で、自分たちの理想のプレーを展開できるようにしていきたい。いい形で決勝トーナメントに進出できるようにね」
 
文:チヅル・デ・ガルシア
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