【W杯キープレーヤー解体新書】アンヘル・ディ・マリア|攻撃に欠かせない戦術上の鍵

2014年06月21日 ロベルト・ロッシ

得意のドリブルで最終ラインに揺さぶりをかけ、崩しのきっかけを。

高い持久力と献身性でインサイドハーフの新境地を切り開いたディ・マリア。アルゼンチンの攻撃のキーマンだ。 (C) Getty Images

 マスチェラーノとともに、南米予選を通して中盤のレギュラーを務めた主軸のひとりだ。本来はきわめて攻撃的なウイングだが、高い持久力と献身的なメンタリティーを備えているため、サベーラ監督は3MFの右インサイドハーフで起用してきた。
 
 あえて「逆足」となる右のポジションに配置されている。ポジションはインサイドハーフながら、チームのメカニズムにおける役割はサイドハーフに近い。サイドバックの攻撃参加の頻度が低いため、攻撃の局面でサイドのスペースを使うのが主にその仕事となっている。
 
 開き気味の位置で足下にパスを受けても、「逆足」ゆえ縦にえぐるシーンは少なく、ゴールに向かって積極果敢にドリブルを仕掛けていく。
 
 ウイングの位置よりプレーの起点が下がり目になるぶん、マークが緩くなり、活用できるスペースが大きくなる。こういったシチュエーションは、スピードに乗った突破が持ち味のアタッカーには有利に働く。得意のドリブルで最終ラインに揺さぶりをかけ、崩しのきっかけを創出するディ・マリアは、アルゼンチン代表の攻撃に欠かせない戦術上の鍵のひとつだ。
 
 ゴールセンスやシュートセンスが高いとは言えず、フィニッシュで違いを作り出すプレーヤーではない。サイドの高い位置でタイトなマークを受け、狭いスペースをこじ開ける仕事を強いられるウイングよりも、スペースを与えられたなかで突破力を発揮できるインサイドハーフというポジションのほうが適しているだろう。所属するR・マドリーでもこのポジション(左サイドだが)でプレーし、新境地を開拓した。
 
 とはいえ、ディ・マリアをインサイドハーフで機能させるためには、それなりのサポートが必要だ。守備の局面で献身的に振る舞うものの、激しいコンタクトプレーでボールを奪えるわけではない。したがって後方に控えるアンカーには、フィルター機能だけでなくフィジカルコンタクトに強いプレーヤーを置く必要がある。
 
 さらにその攻撃力を活かすうえでは、もうひとりのインサイドハーフにも、一定の守備能力を備えたプレーヤーを起用したい。マキシやアルバレスと個性豊かなタレントが揃うが、スタメンでコンビを組む機会が多いガゴが、最適の人材と言えるだろう。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p75より抜粋。
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