【日本代表|インスブルック合宿の見所】乾のコンディション、ベースとなる戦術は?

2018年06月03日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

ゆったりと時間が過ぎていくリゾート地で、急ピッチな組織作りが求められる

日本代表が事前合宿をするゼーフェルト。奥の山の右寄りにあるのがスキーのジャンプ台だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 日本がロシア・ワールドカップの事前合宿地として選んだのが、オーストリアのインスブルック郊外にあるゼーフェルトだ。ここはインスブルック空港からタクシーで20分程度の距離に位置するリゾート地で、76年のインスブルックオリンピック(冬季五輪)でスキージャンプ(70メートル級)の会場になった街でもある。

 そんなゼーフェルトのスキーのジャンプ台の近くにある日本代表の練習場は、自然に囲まれておりサッカーに集中するには打ってつけの環境だ。
 
 そんなゼーフェルトで日本代表の練習は6月3日からスタートするが、見どころのひとつは乾貴士のコンディションだろう。5月20日からガーナ戦までの国内合宿では右足負傷の影響で主に別メニューだった乾が、ここからどう巻き返していくか。自身の誕生日である6月2日にエイバルからベティスへの移籍が決まり、心を整えた状態でワールドカップへの準備を進められるのはポジティブな材料だ。
 
 昨季のエイバルでは例年以上にシュートに絡む回数が増え、90分通して攻守に貢献できるタフさも見せつけた。コンディションさえ整えば、西野ジャパンに良い刺激を与える存在になれる。シャドー、もしくはウイングバックの定位置争いを活性化する意味でも、乾のパフォーマンスに注目だ。
 
 ただ、個々のプレー云々の前にまずはチームの方向性をしっかりと固めたい。ガーナ戦を見るかぎり、どちらかと言えばザックジャパンに近いパスサッカーを標榜しているようだが、果たしてそれが正解なのか。基盤が固まっていないうちから、複数のシステムを使い分けるというのは疑問に思う。ベースあってこそのオプションであり、基礎工事を怠れば選手も混乱するだけだ。
 
 西野監督はズバッとやりたい方向性を選手に示すべきだ。もはや本番まで時間的余裕はないのだから、インスブルック合宿で「このサッカーで行く」というようなものを徹底して落とし込んでもらいたい。例えば監督がブレてしまうと、選手も覚悟を決められないはず。その意味で、6月8日のスイス戦、同12日のパラグアイ戦でのパフォーマンスが重要。結果はともかく、西野ジャパンの"形"をそこで見せなければ相当に厳しくなるのではないか。
 
 ゆったりと時間が過ぎていくゼーフェルトで、急ピッチな組織作りが求められる西野ジャパン。「2010年大会の再現を」と期待されてはいるが、今やそういう不明瞭なファクターに頼らざるを得ない状態だ。このインスブルック合宿で、どんな"形ある成果"を手にできるか。西野監督の手腕が問われる。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
 
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