【今日は何の日?】6月20日「優勝のために屈辱を選んだ西ドイツ」

2014年06月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

強国相手の無駄な疲弊を避け、主力を7人も温存した智将。

 1954年6月20日、スイス・バーゼルのザンクト・ヤコブ・スタジアムで行なわれたハンガリー対西ドイツのグループリーグ2戦目は、8-3という大差の結果で終わった。しかしこれは、西ドイツがこの大会で優勝を果たすためにあえて選んだ屈辱だったのである。
 
 当時、「マジックマジャール」と呼ばれたハンガリーの強さは、群を抜いていた。本大会前の27試合で23勝4分け、総得点数は114(1試合平均4得点以上だ!)。そのなかには、今なお伝説となっているウェンブリーでのイングランド戦(6-3の大勝)も含まれており、ハンガリーは優勝候補の筆頭としてスイスに乗り込んできた。
 
 このハンガリーと同グループ(他にはトルコ、韓国)に組み込まれた西ドイツの智将ゼップ・ヘルベルガーは、まともにやったのでは結果は見えていると、ハンガリー戦を"捨てる"決断を下す。この大会では、グループリーグは4チームによる総当たりではなく、2試合を終えた時点で上位2チームが決勝トーナメント進出、同勝点の場合はプレーオフという変則的なルールが採用されていた。初戦でトルコに4-1で完勝していた西ドイツは、ハンガリー戦で選手を消耗させるより、楽な相手であるトルコともう一度戦うほうが得策と考えたのだ。
 
 その結果、ハンガリー戦では7人のレギュラーメンバーを外して臨んだ西ドイツ。試合は一方的なものとなり、ハンガリーはサンドール・コシチュひとりで4点を挙げるなど、大量8点をゲット。西ドイツが3点を挙げられたのは、ハンガリーがあまりの大差に途中で守備に力を入れなくなったからだ。スタンドの大部分を埋めた西ドイツからの観客は耐え難い屈辱を味わい、メディアはヘルベルガー監督の露骨な主力の温存に「ドイツサッカーに対する侮辱」と叩いた。
 
 しかし智将の読みは、見事に当たる。西ドイツはプレーオフでトルコを7-2で下し、準決勝でユーゴスラビア、準決勝でオーストリアと比較的楽な相手に余力を残して勝利し、決勝へ駒を進める。対するハンガリーは、準々決勝、準決勝でブラジル、ウルグアイという前回大会の2強を相手にし、ウルグアイとは延長戦までもつれ込んで、確実に疲労を蓄積させていた。
 
 決勝では、グループリーグの時とは違ってフルメンバーで真っ向勝負を挑んだ西ドイツ。2点を先取されるも、そこから驚異の反撃で3点を奪って逆転優勝を果たす。2週間前に全国民を激怒させたチームが、英雄として母国凱旋を果たすこととなったのである。目の前の1試合でなく、大会全体を見てプランを練り上げ、栄光に辿りついたヘルベルガー監督の評価が急上昇したことは言うまでもない。
 
 
◆6月20日に行なわれた過去のW杯の試合
 
1954年スイス大会
「グループリーグ」
ハンガリー 8-3 西ドイツ
トルコ 7-0 韓国
イタリア 4-1 ベルギー
イングランド 2-0 スイス
 
1970年メキシコ大会
「3位決定戦」
西ドイツ 1-0 ウルグアイ
 
1982年スペイン大会
「1次リーグ」
西ドイツ 4-1 チリ
イングランド 2-0 チェコスロバキア
スペイン 2-1 ユーゴスラビア
 
1990年イタリア大会
「グループリーグ」
コスタリカ 2-1 スウェーデン
ブラジル 1-0 スコットランド
 
1994年アメリカ大会
「グループリーグ」
ブラジル 2-0 ロシア
 
1998年フランス大会
「グループリーグ」
ベルギー 2-2 メキシコ
オランダ 5-0 韓国
日本 0-1 クロアチア
 
2006年ドイツ大会
「グループリーグ」
エクアドル 0-3 ドイツ
コスタリカ 1-2 ポーランド
スウェーデン 2-2 イングランド
パラグアイ 2-0 トリニダード・トバゴ
 
2010年南アフリカ大会
「グループリーグ」
スロバキア 0-2 パラグアイ
イタリア 1-1 ニュージーランド
ブラジル 3-1 コートジボワール
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