いつかはイニエスタ・ジャパンも⁉ バルサ・スタイルの伝道師が指し示す日本サッカーの明るい未来

2018年05月30日 吉田治良

現在20代の若者は、バルサやスペイン代表の暗黒時代など知らないかもしれない

イニエスタ加入の衝撃をわかりやすく例える「大喜利」がいま、ネット上を賑わせている。写真:川本学

 フットサルの試合を終えて、ぜーぜーと肩で息をしている中年男の隣で、社会人1年目の若者が、ちょっと近所を散歩してきたくらいの涼しい顔をしていた。
 
 聞けば、1994年生まれの23歳だという。「ドーハの悲劇」は誕生前に起こった歴史上の出来事で、あの日韓ワールドカップの熱狂もおぼろげな記憶でしかない。
 
「90年のイタリア・ワールドカップ決勝で、テレビのゲスト解説をしてたのが王貞治だったって知ってる?」

 
 50歳を過ぎたオジサンが鉄板のサッカーネタを振っても、つまらない冗談だと思ってまともに取り合ってくれない。
 
「サッカーと野球の一番の違いは、手が使えないことですねぇ」
 などと世界のホームラン王が話していた頃から、まだ30年も経っていない。
 
 日本サッカーが、信じられないようなスピードで成長を遂げてきたのだと、あらためて実感させられる。
 
 くだんの社会人1年生が、いや、彼よりもう少し年上の20代後半の世代であっても、物心つく頃には当たり前のようにJリーグが存在したし、当たり前のように日本代表はワールドカップの舞台に立っていた。
 
 そして、そんな彼らが世界のサッカーシーンに目を向けた時、華々しく時代を席巻していたのがバルセロナだった。
 
 バルサが14年ぶりにチャンピオンズ・リーグを制したのが、2006年のことだ。現在20代の若者は、おそらくそれ以前の暗黒時代など知らないし、バルサの栄華と歩調を合わせるように世界の列強国となったスペイン代表が、かつて船底に穴の開いた張りぼての無敵艦隊だったことも、もちろん知らないだろう。
 
 しかし一方で、彼らはバルサのポゼッション・スタイルを、スペイン代表の"ティキ・タカ"を、憧憬の念を抱きつつも、つねに身近に感じながら育ってきた。ショートパスをつなぎ、試合の主導権を握り続けるサッカーは、多くの日本の少年たちにとって理想形であり、スタンダードでもあっただろう。
 
 バルサとスペイン代表、このふたつのチームの中心にいたアンドレス・イニエスタが、先頃ヴィッセル神戸の一員となった。
 
 それがどれだけありえない出来事か、わかりやすく例える「大喜利」がいま、ネット上を賑わせている。
 

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