「似た者同士の監督対決」「選手は好きにプレーすればいい」… 魅力的な“クロップ節”から窺えたCL制覇への自信

2018年05月26日 井川洋一

敵について「経験がいつもモノを言うとは限らない」

練習でも会見でも、笑顔がこぼれていたクロップ監督。2012-13シーズン以来、自身2度目となる大一番を、彼は存分に楽しむつもりのようだ。選手も同様の姿勢で臨めるなら、決勝は非常に白熱した、魅力的なものとなりそうだ。 (C) Getty Images

 リバプールのチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝の前日会見は終始、なごやかな雰囲気で進行していった。
 
 主将のジョーダン・ヘンダーソンとユルゲン・クロップ監督は頻繁に白い歯をこぼし、前者はフランス人記者の分かりにくい質問に「もう一度言ってくれるかい?」と返し、会場全体の笑いを誘った。
 
 フィルジル・ファンダイクだけがあまり表情を変えず、低い声で質問に応じ、「モチベーションをさらに高めるために、『イスタンブールの奇跡』(※)のビデオを見たりしましたか?」という問いには、「モチベーションは十分なので、そんな必要はない」と言い切った。
 
 最も会場を盛り上げたのは、やはりクロップ監督だった。敵将ジネディーヌ・ジダンについて「戦術の知識がないという人は多いが、どう思うか?」と問われると、きっぱりとこう回答している。
 
「確かに多くの人が、ジダンには戦術がないと言っている。同じようなことは、私についても言われた。本当に笑わせてくれるよ。CL決勝の舞台に立つ二人の指揮官が、戦術を知らないなんてね(一同爆笑)。
 
 ジダンは、フットボール史で最高の選手のひとりだった。そして、指導者としてもCL3連覇に王手をかけた。ただ、私は彼が監督としても成功すると予想していたよ。
 
 素晴らしい選手を擁する彼のチームは、スイスの時計のように精巧だ。だから、我々はカオスを起こさなければならない。
 
 ジダンは生まれながらのファイターだ。マルセイユのタフな環境で育ち、選手のキャリアではファイターになる必要があった。一方の私も、黒い森(シュバルツバルト)の小さな村で生まれた。似た環境といえば、似た環境だ。そんな2人が、CL決勝であいまみえるのだ」
 
 そして、13度目の欧州制覇を狙うマドリーを前に、自分たちのチームへの自信も覗かせた。
 
「経験は、とても大きなファクターだ。しかも彼らは、非常に強い相手を倒して、ここまでやって来た。ただし、我々とはまだ戦っていない。我々はリバプールだ。ただの良いチームではない。大きなことを成し遂げる力を持ったクラブだ。それがこのクラブのDNAだ。
 
 今大会も、我々がここまで勝ち上がるとは誰も予想していなかった。しかし、史上最多得点を記録する、きわめて特別な勝ち上がり方でここまで到達した。それが我々、リバプールだ。
 
 もちろん、経験は大きなアドバンテージになる。間違いなく、自信に繋がるだろう。ただし、経験がいつもモノを言うとは限らない。戦術を駆使し、自分たちの強みを活かして、彼らとやり合ってみせよう」
 
※トルコ・イスタンブールで行なわれた2004-05シーズンのCL決勝、リバプールはミランに前半で3点を奪われるも、後半に追いつき、PK戦を3-2で制して21年ぶりの欧州制覇を果たした。このような試合展開はもちろん、戦前はあらゆる点でミラン有利と見られていたことも含めて、リバプールの勝利は「奇跡」と称された。

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