【W杯キープレーヤー解体新書】シャビ|ポゼッションのリズムと方向性を司るオーガナイザー

2014年06月18日 ロベルト・ロッシ

狭い局面を細かいパス交換で抜け出すテクニックは特筆に値する。

34歳でフィジカルは衰えたものの、その傑出したパーソナリティーを含めて、スペインにとって不可欠な存在であり続けている。 (C) Getty Images

 2013-14シーズンは故障がちで精彩を欠いたパフォーマンスが続いたが、数多くのボールに触って、ポゼッションのリズムと方向性を司る攻撃のオーガナイザーとしての重要性に変わりはない。
 
 卓越した戦術眼と傑出したパーソナリティーを備え、常に確かなアイデアを持ってプレーに絡み、ボールの動きに明確な意図を与えられるプレーヤーは他にいない。守備の局面においても、読みとタイミングの感覚に優れ、しばしばボールロスト直後のファーストプレスを先頭に立ってオーガナイズする。その意味でバルセロナの、そしてスペイン代表のスタイルにおいて決定的な役割を果たしていると言える。
 
 34歳を迎えて、全盛期と比べればダイナミズムという点ではやや落ちている。かつてはオフ・ザ・ボールで前線に攻め上がってフィニッシュに絡む場面がよく見られた。現在は、ポジションを守り、「ボールを走らせる」ことにより専念してプレーしているように見える。
 
 とはいえ、きわめて精度の高いボールコントロールとピッチを俯瞰で見ているような卓越したプレービジョンによって自在にボールを操り、相手守備陣のタイミングをずらしてスペースとパスコースを作り出し、局面を前に進めるそのゲームメークは、いまなお他の追随を許さない。狭いスペースを細かいパス交換で抜け出すテクニックも特筆に値する。イニエスタとの間でボールを動かしている限り、簡単にロストするのは考えにくい。
 
 ピルロと並んで世界最高のレジスタ(司令塔)といまなお評価できるプレーヤーだけに、同じレベルでプレーできる代役は不在と言っていい。ただし、スペイン代表のベンチにはセスク、カソルラというワールドクラスが出番を待っており、さらに言えば、イニエスタを前線から中盤に下げるオプションもある。
 
 したがって、シャビがなんらかの理由で欠場しても、その穴が埋まらないわけではない。とはいえ、その誰もシャビほどのクオリティーで中盤をオーガナイズするのは難しいはずだ。欠場時にチームとしてのパフォーマンスが10-15パーセントダウンするのは避けられないだろう。
 
 02年の日韓大会以来、通算4度目となる今回のワールドカップは、おそらくシャビにとって最後のビッグトーナメントになる。フィジカル面ではいささかの衰えが見られるものの、その傑出したパーソナリティーも含めてチームにとって不可欠な存在であり続けている。コンディションさえ万全ならば、主役を担うのはまず間違いない。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎

※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p22より抜粋。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事