元日本代表の森岡隆三監督が鳥取で活かす「鹿島流コミュニケーション術」

2018年05月06日 塚越 始

互いに厳しく要求し合い、要求するからにはやる。

鳥取を率いる森岡監督。開幕当初のチーム状態は絶好調だったが、現状は3連敗。巻き返しを目指す。(C) J.LEAGUE PHOTOS

「点を作る、チャンスを作る、チームとして求めている仕事をみんながしてくれている」

 ガイナーレ鳥取を率いて2年目を迎える森岡隆三監督は、開幕6試合負けなしとスタートダッシュに成功した。ただその後は3連敗を喫しており、踏ん張りどころを迎えている。

 37歳のフェルナンジーニョが"お父さん"のような存在になり、若手で生きの良い20歳のヴィトール・ガブルエル、21歳のレオナルドが前線から牽引。そこにGK北野貴之や可児壮隆ら日本人選手が絡んで相乗効果を生み出している。

「プレシーズンの時から『コミュニケーションを取りましょう』と言ってきました。それはただ慣れ合いで話をするのではなく、お互いに要求し合うこと。僕が鹿島にいた時、ブラジル人選手がいて、よくそういう声が飛んでいました。『チームはファミリーだ』と」

 そう語る元日本代表DFの指揮官が鹿島に在籍したのは、桐蔭学園高卒業後の1994年から95年途中まで。10代の若き日をスター集団のなかで過ごし、清水エスパルスに移籍した。1年半で公式戦1試合のみしか出場できなかったが、森岡監督は当時の体験を今も大切にしているという。
 
「ただ、なんとなく言葉を懸けるのではなく、目標に向かってのコミュニケーション。現在で言えば、『50、50 30』。勝点50、得点50、失点30とその先の昇格を見据えて、互いに厳しく要求し合い、要求するからにはやる。そういう関係が上手くできています」

 ただ、元気に声を出す、楽しく対話をするということを言っているわけではない。「目標」に対しての意見であり議論――建設的な話し合いだ。

「新加入の若いブラジル人選手は貪欲さがあり、それが日本人選手にもいい影響を与えていると思います。あとはベテランのフェルナンジーニョの存在も大きいですし、GKの貴之のまとめる力も大きいです。チームに対する献身的なところを、ピッチで表現できている。そこに至るまでのコミュニケーションを大切にしてきました」

 そのようにコミュニケーションの質にこだわってきたことを、指揮官は強調していた。

「まだシーズン序盤。去年も開幕5試合は悪くなかったので(苦笑)、調子に乗ることはまったくない。ただ、『未来を切り開くためには前向きなプレーをしよう』と声を掛けましたが、ポジティブに、前向きにできているとは感じています」

 その負けていなかった期間のように、ベクトルを再び斜め上に向けられるか。森岡監督の鹿島流コミュニケーションが、鳥取再浮上、そして目標の「勝点50」の先にあるJ2昇格への鍵を握る。

取材・文:塚越 始
 
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