【戦術検証】ホーム初勝利を挙げた清水は、このまま浮上できるのか?

2018年04月30日 前島芳雄

1試合平均1.00失点と大崩れしていないことは大きい。

現在7位の清水は、安定した守備をチームのベースにしている。(C)J.LEAGUE PHOTOS

「勝てていない中でも内容はけっして悪くなかった」(ヤン・ヨンソン監督)
 
 その言葉は、指揮官だけでなく清水の選手たちも常に口にしていた。そして水曜日(25日)の10節・名古屋戦でようやく7試合ぶりの勝利を挙げると、28日の11節では柏に粘り強く勝って2連勝。ようやくリーグ戦で今季のホーム初勝利を掴んだ。
 
 開幕から3節までは2勝1分で3位に立ったが、その後は6試合勝利なし(2分4敗)と失速し、ここ2試合は連勝と浮き沈みのある状況だが、はたして今の清水は強いのか、弱いのか……分かりやすい材料が多かった柏戦の内容を通して検証してみたい。
 
 まず安定感という意味でポジティブな要素は、昨年よりも間違いなく守備力が上がっていることだ。ここまでの11節で3失点した試合はなく、2失点も2回だけ。1試合平均1.00失点と大崩れしていないことは大きい。
 
 チームの狙いとしては、できるだけ高い位置で4-4-2のコンパクトな守備ブロックを作って、相手に縦パスを入れさせずに攻め手をなくすこと。そのうえで、ロングボールを跳ね返してセカンドボールを拾ったところや、高い位置でインターセプトしたところからショートカウンターを発動してチャンスを作るというのが、もっともやりたい形だ。それがハマっている時は、自分たちのペースとなる。今節でいえば、後半の立ち上がりで何度もチャンスを作った時間帯がそれに当たる。
 
 ただ、柏のようにボールを前に運ぶ能力が高い相手には、ラインを高く保ちきれずに押し込まれる時間も多くなる。前半の多くの時間と終盤は、そのような展開になっていた。だが、そんな時間帯が続いても、ゴール前をしっかりと固めて粘り強く守りきれているのが、昨年とは大きく異なるところだ。
 
 そこは元韓国代表CB、ファン・ソッコの加入が非常に効いている。ファン・ソッコは個としての強さ・高さにもカバーリングにも長け、リーダーシップや自信に満ちたプレーによって精神面でも他の選手たちの支えになっている。今節でも、危ないところには必ず彼が立ちふさがり、出色の働きを見せていた。
 
 また、ファン・ソッコの存在によって相棒のフレイレも持ち味を発揮しやすくなっており、特にクロスやロングボールへの対応では抜群の強さを見せている。そこにGK六反勇治の安定感やビッグセーブも加わり、ゴール前の忍耐力は大幅に向上。苦手としていたセットプレーの守備に関しても、昨年よりも失点が大幅に減少している。
 
 柏が本調子ではなかったとはいえ、J1の中でもパス回しがうまく、こじ開ける力がかなりあるチームであることは、この試合でも確認できた。その相手に対して「ボールを持たれる時間が多かったけど、全員がハードワークして耐えることができた」(ファン・ソッコ)こと、ボックス内では決定的なシュートを1本も打たせず、クリスティアーノのゴラッソによる1点に抑えきったことは、守備の自信につながるはずだ。
 

次ページ首位の広島戦で勝点を持ち帰ることができれば…

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