イニエスタ、涙の退団会見…「バルサと対戦の可能性があるチームには行かない。それだけは決めている」

2018年04月27日 山本美智子

「僕は自分自身をよく知っているから」

会見場に入ってきたときから目を潤ませていたイニエスタ。「4月中に話す」という約束どおり、みずからの去就について語った。(C)Rafa HUERTA

 バルセロナから、「4月27日金曜日13時半から、アンドレス・イニエスタの記者会見が行なわれます」との発表があったのは、当日の午前10時半だった。

 にもかかわらず、ついにイニエスタの去就が明かされるとあって、バルサの練習場に隣接している記者会見場には、100人を優に超える国内外のメディアが集結した。

 13時38分、練習を終えたトップチームのチームメイトたちが、続々と記者会見場に入ってくる。続いて、父親のホセ・アントニオ氏、妻のアナ・オルティスさんをはじめとする家族が姿を見せ、ジョセップ・マリア・バルトメウ会長らフロント陣も席についた。

 そして13時42分、一斉にカメラのフラッシュが焚かれ、この日の主役、アンドレス・イニエスタが登場した。登場したときから、目を赤く腫らして現われたイニエスタは、「この会見は、今シーズンが最後になるという決断を公にするためのものになる」と切り出した。

「この決断は、クラブ内部のこと、僕個人のこと、家族レベルのこと、それらすべてを熟慮に入れたもの」と、考えた末の決意だったことを強調しながらも、「今日は、僕にとって、とても難しい日だ。ここは、僕の家だ。僕の場合は…本当に難しい…」と言葉に詰まり、こぼれそうになる涙を堪え、その度に、「難しい…」と繰り返した。
 
 イニエスタは今回の退団について、「自然の摂理」だと表現した。

「僕はだれのことも騙したくない。あと数日で34歳になる。僕はこのチームのためにすべてを出し切った。その瞬間が来たんだと思う。フィジカル面でも、メンタル面でも。僕は自分自身をよく知っているから」

 また、「自分にすべてを与えてくれた」とバルサとマシア(バルサ・カンテラの総称)に対する感謝、日々を過ごしてきたチームメイトやコーチングスタッフ、自分の成長を見守ってくれたサポーター、そして22年前に車でバルセロナに来たときから、いまこの瞬間まで一緒にいる家族、人生の宝(子どもたち)を授けてくれた世界で一番大切な妻のアナさんなどへ感謝を述べた。

 会見に来た全員が、イニエスタの言葉に感極まる瞬間もあり、会見中、だれもがこのキャプテンの言葉を一言一句もらすまいと、真剣に聞き入っていた。

 移籍先については、「バルサと対戦する可能性のあるチームには行かない。それだけは決めている。だから、ヨーロッパのチームでプレーすることはない。どこでプレーするかは今シーズンの終わりに伝える」として、明らかにしなかった。

 イニエスタは最後に、こう語った。

「偉大な選手、偉大な人物として人々の記憶に残ることができたら…。最終的に、サッカーは過ぎていくもの。僕らに残るのは、その間に出会った人たちや、多くの時間をともにしたチームメイトとの関係だ。最後にはそれだけが残る。それぞれが僕への意見を持っていると思うけど、僕がここで努力してきたのは、あらゆる意味で、偉大な選手、偉大なスポーツ選手になることだった。できるだけ最良の形で、クラブを代表する存在になれるように努力してきたつもりだけど、それが達成できていることを願うよ」

 イニエスタが会場を去る際に自然と沸き起こった、いつまでも止むことのない拍手が、彼の願いが叶っているという事実を、雄弁に語っていた。

取材・文●山本美智子(フリーランス)

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