浦和時代の違和感はもう消えた――躍進する札幌で駒井善成の中に生まれた“覚悟”という気持ち

2018年04月25日 佐藤亮太

昨季終盤は思わぬ壁に…。試合に出ていても自分の居場所を探しあぐねていた。

今季浦和から期限付きで札幌に移籍した駒井。ペトロヴィッチ監督のもとで、開幕から大いに躍動している。写真:徳原隆元/山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

「もし駒井が試合に出ていれば、我々が勝利に近づけたかもしれない」

 スコアレスドローで終わったJ1リーグ9節・浦和レッズ対北海道コンサドーレ札幌戦を振り返った札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督。ミシャの愛称で呼ばれる指揮官は生来の負けず嫌い。そのためだろうか、試合後の会見でMF駒井善成の名をあえて出したのは、駒井が期限付き移籍のため、契約上、浦和戦すべての公式戦に出場できないことへの皮肉が感じられた。

 駒井を見出した自負のあるミシャの彼への愛情は深く、浦和戦で起用したい気持ちは強かった。それは駒井自身も同じはずだ。

 その駒井は、恩師が去った浦和で思わぬ壁にぶち当たっていた。

 昨年8月5日、20節・大宮アルディージャ戦からミシャに代わって指揮を執った堀孝史監督のもと、駒井はしばらくコンスタントに起用されたが、リーグ27節のホーム鳥栖戦(9月23日)以降、公式戦での出番はなく、帯同メンバーからもほぼ外されたのだ。

 戦術的な問題か。それとも別の理由か。コンディションは良かっただけに担当記者がみな首を傾げるほど奇怪だった。

 ただ本人は「準備はできている。GOサインがあればピッチに出るだけ」と言うのが精いっぱい。スタンドで観戦する駒井の表情はなんとも切なかった。

 そして今年1月、出場機会を求め、駒井は恩師のいる札幌へ向かった。仕掛けてナンボのドリブラーは、右サイドでリーグ8試合に先発出場(4月24日時点)。84分で交代した2節・C大阪戦以外はフル出場している。押しも押されもせぬレギュラーの座を掴んだわけだ。
 
 浦和戦前日、さいたま市内で行なわれた全体練習。久しぶりに見た駒井は充実感に漲っていた。その理由はチームの主力となって、心に溜まった澱がなくなったからに他ならない。

「浦和の時は、試合に出ていてもどこか周りに引っ張られていた」
 チームのため、走りに走った駒井だが、代表クラスが居並ぶ浦和にあって、自分の居場所あるいは立ち位置を探しあぐねていた。

 しかし、今は違う。
「札幌では引っ張る立場。自分が活躍して、チームを勝利に導きたい気持ちがより強くなり、試合のピッチに立つ気持ちが変わった」

次ページ駒井は複雑難解なミシャサッカーの伝道師の役目を引き受けている

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