下馬評を覆した「なでしこJ」 決勝進出を引き寄せた最大のポイントは何だったのか?

2018年04月20日 西森彰

20日深夜にオーストラリアとの決勝戦。厳しいグループを突破できた要因は?

中国戦では圧巻のドリブルシュートを決めた岩渕。オーストラリア戦でも注目の選手だ。(C) Getty Images

 高倉麻子監督率いる「なでしこジャパン」が女子アジアカップ連覇に王手をかけた。大会前の下馬評はそれほど高くなかったが、グループリーグからの4試合を2勝2分け(得点8・失点2)で勝ち抜いて決勝進出。優勝へあとひとつのところまでたどり着いた。

 これまでは、どちらかと言えばテストを重視しているようにも見えた高倉監督だったが、勝ち切らなければいけない準決勝の中国戦では、しっかり試合に勝つ采配を振るって、これをモノにしている。

 金曜の夜に行なわれるオーストラリアとの決勝戦が楽しみだ。

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 自力での決勝トーナメント進出のために最低1得点以上での引き分けが必要なオーストラリア戦を経て、なでしこジャパンの戦いぶりは劇的に改善した。最大のポイントは、宇津木瑠美(シアトルレイン)のボランチ起用だった。海外で長期間戦ってきた宇津木は、左足での展開力だけでなく、守備力も高い。代表ではセンターバックの経験もある彼女がアンカーの位置に入り、失点への恐怖心が減退した。

 また、宇津木の起用効果によって守備の労から解き放たれた阪口夢穂、隅田凛(いずれも日テレ・ベレーザ)が、攻撃力を充分に発揮できるようになった。ベトナム戦では前がかりに、韓国戦では後ろ向きになり過ぎていたチームバランスが、改善した。

 そして、アジア最強クラスのオーストラリアに渡り合えたのは、最終ラインが必要以上に恐怖心を持たなかったことも大きい。二十歳の市瀬菜々(ベガルタ仙台レディース)や、代表経験の少ない清水梨紗(日テレ・ベレーザ)が対応できたのは、負荷のかかる場面で彼女たちを辛抱強く使い続けてきた指揮官の功績と言ってもいい。

 その一方で、勝たなければいけないゲームを勝ち切れるだけの強さがあるのかどうかについては、クエスチョンマークも付いた。オーストラリア戦では、選手交代が1枚だけで、これは準決勝進出だけに主眼を置き、目先の勝利にこだわらなかったゆえの結果かもしれない。実際、同点に追いつかれた残り数分間は、最終ラインで時間を潰して、確実な2位抜けを選択している。

 このゲームを勝ち切っておけば、アジア最強国をグループステージ敗退に追い込めた。また、1位抜けしていれば、準決勝の対戦相手も格下のタイ。決勝への疲労を小さくできた可能性は十分にあったし(結果的に、オーストラリアはPK戦に持ち込まれるほど苦戦したが)、優勝確率は、相当上がっていたはずだ。
 

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