選手を変貌させたペップの指導法――シティはなぜプレミアリーグを独走優勝できたのか?【後編】

2018年04月18日 松澤浩三

英国の有名識者が口を揃えて称えるペップの指導力。

ペップの薫陶を受け、大きく成長した一人であるザネ。そんなシティ屈指の韋駄天は、恩師と言うべき、スペイン人指揮官からの指導内容を明かした。 (C) Getty Images

 イングランドの識者たちが声を揃えてペップを称賛するなかで、最も彼らが評価しているポイントが、選手たちの質を向上させる指導力の高さだ。
 
 元ユナイテッドの主力CBで、現在は『BT Sports』で解説者を務めているリオ・ファーディナンドもその一人である。
 
「監督としてのグアルディオラの質は、選手を成長させるところにある。バルセロナでもそうだったし、バイエルンでもそうだった」
 
 同局のハイライト番組でペップを絶賛したファーディナンドは、さらに実際にバイエルンの選手たちと話した内容を明かしている。
 
「彼らはみんな、『ペップが俺を成長させてくれた』と言っていた。トレーニングからして、まるで他とは違う。すでに選手として完成されたと思われたダビド・シルバがさらに素晴らしい選手になり、ケビン・デ・ブルイネも真のワールドクラスに成長した」
 
「ニコラス・オタメンディはプレミアリーグでは通用しないCBと思われていたが、その評価を完全に覆し、今シーズンはリーグでも屈指のDFだ。右SBのカイル・ウォーカーも、ワンランク上の選手として成長している。これこそ、監督として最重要な資質と言える」
 
 同番組に出演していた元アーセナルDFで、現役時代にはアーセン・ヴェンゲルの薫陶を受けたマーティン・キーオンも、ファーディナンドに同調している。

 

「グアルディオラが作り出すパスサッカーは"特別なブランド"みたいなものさ。彼の指揮下で、スターリングは急成長した。ファイナルサードでスペースを見つけ出して決定的な仕事をしているね。彼の下でプレーすると、誰もが選手としてワンランクもツーランクも成長できるんだ」
 
 スターリングの変貌ぶりを口にしたキーオンは、ペップの指導法を褒めちぎる
 
「スターリングに対して、『ドリブルはできるかもしれないが、その逆の動きが分かっていない』と、手取り足取り教えているビデオを見たことがある。トレーニングからしっかりとマンツーマンでコーチングして、選手に自分の考えていることを伝えている。特にペップはトップレベルでプレーしていたから、選手たちも尊敬しているし、分かりやすいのではないだろうか」
 
 実際、グアルディオラ監督の下でプレーしている選手たちはどう考えているのか。マンチェスターに来る以前から、指揮官が獲得を望んでいたとされるレロイ・ザネは、ファーディナンドやキーオンの言葉を裏付けるかのように、「監督は僕のプレー全てを変えた」と英紙『Telegraph』に語っている。
 
「ドイツにいた時はドリブルにフォーカスしていたが、監督は全ての面を詳細に見ている。ひとつの動き、どの方向の空いたスペースに行くか、守備での動き、守備位置まで、本当に細かくね。これらはチームメイトが使えるスペースを見つけ出すのにも役立ち、もちろん、僕自身も好ポジションを見つけられるようになった。監督は、僕のプレーをまるで違ったレベルに押し上げたんだ」
 
 今シーズン、最も成長した若手選手として、プレミアリーグの最優秀ヤングプレーヤーの大本命にも推されているザネは、向上した理由も口にした。
 
「監督は常に、全選手を向上させようと試みている。過去に一緒に仕事をした選手、例えば(リオネル・)メッシの映像を、僕は見せられた。メッシが1対1の状況でどのような動きをするかを注意深く見るように言うんだ。監督は僕らに100%のプレーを要求し、常に集中するように言う。以前の僕には、それが不足していたのかもしれない」
 

次ページ多方面から絶賛されるペップ・シティだが…。

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