鹿島の面々を驚愕させた魅惑の「ダブル司令塔」は、なぜ封印されてしまったのか?

2018年04月18日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

昌子源や三竿健斗もそのクオリティーに脱帽。

絵に描いた餅に終わりそうなバネガ(左)とガンソ(右)のダブル司令塔。昨夏の鹿島戦以降、ふたりが同時にピッチに立つ試合はほとんどなかった。(C)Getty Images

 2017年7月22日、鹿島アントラーズは「Jリーグワールドチャレンジ2017」でセビージャと対戦した。

 このスペインの雄を2-0で下したにもかかわらず、鹿島の選手たちは口々に「レベルの差を感じた」と吐露した。とりわけ違いを作り出していたのが、4-3-3のインサイドハーフに入ったエベル・バネガとガンソで、CBの昌子源は、「(鹿島のボランチの)レオ・シルバがあれほどボールを奪えないのを初めて見た」と驚きを隠せなかった。
 
 そのレオ・シルバとダブルボランチを組んだ三竿健斗も、クオリティーの高さに脱帽した様子だった。
 
「ボールの出所が2つあって奪うのが難しかった。(ふたりは)ポジショニングが素晴らしい。プレスを掛けづらい位置でボールを受けるし、取りに行けばそのスペースを使われる。チンチンにされた」
 
 だがその試合以降、セビージャのエドゥアルド・ベリッソ前監督(2017年12月に解任)は、バネガとガンソを代わる代わる起用するようになる。シーズンが始まってからも、ふたりの司令塔が同時にピッチに立つ試合はほとんどなかった。
 
 さらに、ベリッソの後任に指名されたヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の就任以降は、バネガが引き続きチームの中心に据えられた一方で、ガンソは構想外となった。少なくとも今シーズンは、ふたりが同時にピッチに立つことはないだろう。
 
 鹿島を驚愕させた「ダブル司令塔」は、なぜ封印されたのか。それは、ふたりのインテンシティーの低さにある。
 
 バネガは一級品のパスセンスを誇りながらも、インテンシティーの高い試合では存在感が希薄になりがちだ。昨シーズンにインテルで6得点・7アシストをマークしながら、1年で戦力外となったのは、まさにそれが理由だった。
 
 かたやガンソも、卓越したキープ力と敵の虚を衝くスルーパスという武器がありながら、プレースピードが極めて遅いという欠点がある。そのため、集中的にプレスを掛けられ、持ち味を発揮できない試合が少なくなかった。

 このインテンシティー不足に加え、どちらも守備力が低い。だからこそ、同時起用が憚られた、というのが理由だろう。
 
 現在のセビージャの基本システムは4-2-3-1。中盤の底には主にバネガとステベン・エヌゾンジが並び、トップ下ではフランコ・バスケスが起用されるケースが増えている。

 プレシーズンの鹿島戦で輝きを放ち、可能性を感じさせたバネガとガンソのダブル司令塔だが、どうやらこちらは「絵に描いた餅」のままシーズンの終幕を迎えることになりそうだ。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事