【W杯キープレーヤー解体新書】マリオ・バロテッリ|傑出した個人能力を持つ超弩級のタレント

2014年06月14日 ロベルト・ロッシ

代役不在の絶対的エースストライカー。

傑出した個人能力を持つバロテッリ。組織への協調性は低いが、独力で違いを生み出せる希少価値の高い選手だ。 (C) Getty Images

 恵まれた体躯にパワーとスピード、テクニックを兼備した超弩級のタレント。アッズーリ攻撃陣の中で、単独で違いを作り出せる唯一の潜在的ワールドクラスだ。イタリアの基盤はクオリティーの高いMF陣による安定したボールポゼッションだが、それをフィニッシュにつなげるストライカーがいなければ、どれだけ中盤を支配して主導権を握ってもゴールは奪えない。その意味で言えば、欠かせないキーマンである。
 
 前線で攻撃の基準点として機能するよりも、敵2ライン(DFとMF)間に下がって足下でパスを受ける形を好む。そこから一旦前を向いたら、スペースがあれば躊躇なくミドルシュートを狙い、目の前にDFがいれば強引な突破でゴールに迫るか、あるいはファウルを誘って好位置からのFKをもぎ取る。敵守備陣に常に脅威をもたらす存在で、しばしば独力で決定的な違いを作り出す。
 
 単独で局面を打開しようとする傾向が強いうえ、スペースを作ったり、裏を狙ったりするオフ・ザ・ボールの動きなど組織的な連係に無関心、守備の局面でもコンスタントな貢献が期待できないなど、戦術的な観点では欠点が山ほどある。さらに、言うまでもなくメンタル的に不安定で、相手の挑発に乗ったり、自分のプレーに納得がいかずに「爆発」し、カードを受けるリスクが非常に高い。
 
 しかし、傑出した個人能力が、そうしたマイナス面を補って余りあるレベルにあるのもまた事実。代役となりうるクオリティーを備えたタレントもいないだけに、プランデッリ監督としては、その全面開花に賭けざるをえない。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p48より抜粋。
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