「ブラジルの10番」 期待と重圧を背負うネイマールは“伝説”となれるか

2014年06月12日 大野美夏

エースとして真正面から受け止めなければならない。

歴代のクラッキ(名手)が背負ってきたブラジルの10番には、やはり特別な重みがある。ネイマールは名だたるレジェンドたちを超えられるのか。 (C) Getty Images

 待ちに待ったその時が、ついに来た。ネイマールにとって最大の夢、幼い頃から憧れつづけたワールドカップの舞台に、ついに立つ時がやって来たのだ。
 
 前回の南アフリカ・ワールドカップ前だ。ブラジル国内では、ネイマール待望論が吹き荒れた。
「ネイマールを招集しろ!」
 そんな叫びにも似た声が、至るところで聞かれた。当時18歳のネイマールは、僚友ガンソとともにサントスで旋風を巻き起こしていた。
 
 しかし、ブラジル代表のドゥンガ監督は、そんな世論に「NO」を突きつけ、ネイマールをセレソンに加えなかった。
 
 4年間待たされたネイマールにとって、これが初めてのワールドカップとなる。残念がるのは、セレソンのテクニカルコーディネーターを務めるカルロス・アルベルト・パレイラ(94年大会の優勝監督)だ。
「4年前、南アフリカにネイマールを連れて行くべきだった」
 
 そのネイマールをはじめ、今大会のセレソンはワールドカップ未経験者が多く、その点を指摘する声がある。それに反論するのがジーコだ。
「このチームは若い選手が多いと言うが、彼らはブラジルやヨーロッパでビッグトーナメントを戦い、大舞台の経験を十分に持っている。決して経験の浅い選手たちじゃない」
 たしかに、どの選手も重圧のかかる重要な戦いをこなしてきている。
 
 それでも、ワールドカップの重圧は特別だろう。その双肩にのしかかるのは、サッカー王国の誇り、自国開催の責任、国中からの期待、世界中からの注目だ。しかもネイマールは、セレソンのエースとしてそれを真正面から受け止めなければならない。押し潰されてもおかしくはない。
 
 そんなネイマールにとって心強いのは、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督の存在だ。人心の機微を知り尽くすフェリポン(スコラーリの愛称)は、こんな物言いで若きエースの負担を軽減する。
 
「ネイマールはもちろんセレソンの主役だ。カウンターアタック、アドリブ、彼にしかできないことがある。チームはネイマールのためにプレーするし、ネイマールもチームのためにプレーしなければならない」
 
 そのスコラーリの下で02年大会を制した元キャプテンのカフーも、こう言って援護射撃する。
 
「ネイマールはブラジルにとって最大の期待の星である。最大のスターだ。ブラジル人に限らず、世界中の人からもそう見られているはずだ。でも、ネイマールがひとりで全てを解決できるわけじゃない。その責任を押し付けてはいけない。セレソンの全員がタイトル獲得に向けて助け合わなければならない」

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