【W杯キープレーヤー解体新書】ネイマール|1対1では止められない驚異のドリブル

2014年06月12日 ロベルト・ロッシ

2、3メートルのスペースがあれば致命傷を与えられる。

1対1で前を向かせたら、ネイマールを止められるDFはまずいない。その突破力は驚異的だ。 (C) Getty Images

  ブラジルにとっては今大会のシンボル的な存在だ。かつてのペレのように、絶対的なヒーローとして優勝に貢献する働きが期待されている。22歳でその重圧に耐えられるかどうかは疑問ながら、タレントは本物だ。スピード、テクニック、ファンタジアのいずれを取っても、歴代スターに引けを取らない。
 
 数ある武器の中で一番の売りがドリブル突破。1対1で前を向かせたら最後、その進行を止められるDFはほとんどいない。同時に守備側が抱えなければならないのが、ネイマールに対して数的優位を作ろうとすると、他のゾーンで数的不利を生み出してしまうジレンマ。ブラジルは世界屈指のタレント集団であり、オスカールを筆頭に、フッキ、フレッジ、パウリーニョら攻撃的なプレーヤーが、そのひずみを容赦なく突いてくる。
 
 タイプ的には周囲と連動してプレーするよりも、単独で局面を打開しようとするアタッカーだ。足下にボールを要求し、そこからドリブルで急加速してマーカーを置き去りにする。そして正確なシュートや質の高いアシストで、決定的な場面を作り出す。
 
 そうしたスタイルゆえ、スムーズなボールの流れを停滞させる場面がある。周囲を使ってよりシンプルにプレーすれば、労を厭わない積極的なオフ・ザ・ボールの走り込みで攻撃を活性化できれば、セレソンの破壊力はさらに増す。
 
 持ち味を最も発揮するのは、スペースのあるエリアで前を向けた時だ。敵は2、3メートルのスペースを与えるだけで致命傷となる。リードしている状況で、相手が攻めざるを得なくなり、背後を狙えるようになれば、まさに独壇場だ。
 
 狭いスペースを強引にこじ開けるテクニックとアジリティーも、もちろん備えている。ただ、強引な突破を試みてボールを失うケースが散見され、そこが課題だ。
 
 勝ち進めば、勝ち進むほど、均衡した状況をワンプレーで打開する難易度の高い仕事が求められる。そこで決定的な違いを作り出し、チームを勝利に導けば――。レジェンドと比較されてきた「ペレの再来」は、名実ともに国民の英雄になれるだろう。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』P10より抜粋。
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