不振に陥った東福岡のエースが圧巻の出来!変貌の裏側にあったのは指揮官からの“ある言葉”

2018年04月09日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

指揮官の檄に発奮。メンタル面に課題を抱えていた大森は…

4点目を奪った大森(9番)。右サイドから切れ込み、鮮やかにネットを揺らした。写真:松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)

 本山雅志(北九州)や日本代表の長友佑都(ガラタサライ)などを輩出してきた東福岡は、長きに渡って高校サッカー界を牽引してきた。

 1997年度には三冠(インターハイ、選手権、高円宮杯※現プレミアリーグ)を達成。近年も安定した結果を残しており、2015年度にはインターハイと選手権の2冠を成し遂げた。昨季も日本一こそ掴めなかったが、福田湧矢(G大阪)と阿部海大(岡山)がJの舞台に進んだ。
 
 今季のU-18高円宮杯プレミアリーグWESTの開幕戦では、優勝候補の筆頭という声も挙がる京都U-18を撃破。5得点を奪う圧勝劇で、"やっぱり赤い彗星は今年も強い"という印象をライバルたちに与えた。
 
 とりわけ、輝きを放っていたのが、FW大森真吾(3年)だ。3-1で迎えた89分。後半途中に最前線から右サイドハーフへポジションを移した点取り屋は、相手SBの背後に抜け出すと単騎突進。最後は角度のないところから右足を振り抜き、勝利を決定付ける4点目を奪った。ゴール以外でも気持ちの入ったプレーでチームを牽引し、主軸としての矜持を感じさせた。
 
 開幕戦で躍動した大森は早くから期待を掛けられていた逸材だ。森重潤也監督に182センチの高さとスピードを買われ、昨季から多くの出場機会を得た。しかし、メンタル面の弱さが玉に瑕。昨冬の選手権で結果を残せず、「何もできないまま終わった」と自身の無力さを痛感させられた。
 
 新チームで託された背番号は9。点取り屋として飛躍を期すべく、高校サッカーラストイヤーへと挑んだ。しかし、その想いとは裏腹に自身の調子は上がらない。チームも2月に行なわれた九州新人戦で準優勝を収めたが、内容が振るわずに指揮官から苦言を呈される機会が多くなった。

 その不安はやがて結果として現れるようになり、3月中旬のサニックス杯で予選リーグ3連敗。続く船橋招待U-18サッカー大会も1勝1分4敗で15チーム中14位に沈んだ。周囲からも驚きの声が聞かれ、「今年の東福岡はどうしたの?」という声が至る所で聞かれた。

 チームの出来に責任を感じた大森は自身を変えるべく、ある行動に出る。コンディション不良で船橋招待に帯同していなかった主将・中村拓也(3年)の代役に、自ら立候補したのだ。
 
 とはいえ、自分を変える作業は簡単ではない。チームが大不振に陥った船橋招待では気持ちを見せられず、森重監督に「背中で見せろ」と度々叱責された。

 指揮官にそこまで檄を飛ばされれば、現状を打破したいと思うのは当然だ。「ここ2年間は結果が出ていないので、東福岡の名前を全国区にしたい」という一心で自身と向き合った。大森の取り組みは実を結び、キャプテンマークを巻いた開幕戦ではプレーでチームを鼓舞。自らゴールも決め、開幕戦勝利に大きく貢献した。

 以前はネガティブな言葉が多かったが、今では「得点王取りたい」という言葉が出るほどに。主軸として存在感を示した男は、チームとしても個人としても結果を残し、目標である高卒でのJ入りを掴み取るための大きな一歩を踏み出した。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)

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