【現地発】イスコがイスコらしくいられる場所…代表で最適なポジションを与えられ躍動!

2018年04月02日 エル・パイス紙

代表におけるイニエスタの後継者候補に。

いまのスペイン代表に存在する「そのままのイスコ」を受け入れられる環境が、このテクニシャンをより一層輝かせている。(C)Getty Images


 バルセロナで進退問題が浮上し、ロシア・ワールドカップを最後にスペイン代表からの引退を示唆しているアンドレス・イニエスタの後継者探しは、そのふたつのチームにとって極めて大きな難問だ。

 スペイン代表においてその役割を期待されているのがイスコだ。昨年バルサのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長が、攻撃的MFの新たな担い手として獲得をめざしたのは決して偶然ではない。

 今シーズン、レアル・マドリーで出場機会が一定しないイスコであるが、代表ではジュレン・ロペテギ監督の下で存在感が向上。いまや不動の主力のひとりで、ワールドカップのメンバー入りも確実視されている。

 先のドイツとの親善試合(スコアは1‐1)でも、偽の左ウイングとして、得意のドリブルを織り交ぜながらイニエスタ、チアゴ・アルカンタラ、ダビド・シルバといった選手たちと頻繁にパスを交換し、攻撃陣を牽引。サイド、中央と自在にポジションを移すことで相手DFを幻惑しつづけた。さらにその4日後のアルゼンチン戦では、ハットトリックも達成している。

 
 イスコが置かれている状況が、代表とマドリーで明暗分かれる結果となっているのは、監督からの信頼の度合いに起因する。代表ではロペテギ監督から左サイドを起点にしながら、2ライン(敵のMFとDF)間でボールを受けて仕掛けるという、もっとも得意とするプレーを見せる自由と権限が与えられているのに対し、マドリーでは、その左サイドのスペースにクリスチアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマが頻繁に流れてくる。

 マドリーのジネディーヌ・ジダン監督は3トップ、あるいは2トップの背後のポジションをイスコに与えているが、前線にすでに複数のFWが鎮座しているため、プレーゾーンはおのずとゴールから遠ざかり、アタッキングサードで決定的な仕事を見せるような場面はほとんどないのが現状だ。

 代表では、出場時間あたりの得点率が、マドリーの2倍以上の数値を記録しており、ボール奪取数を除けば、パス成功数、ドリブル成功数、シュート数と他の数値も軒並み代表のほうが上回っている。スペイン代表のチームスタッフのコメントが、イスコのそうしたパフォーマンスの違いを裏付ける。

「サイドを起点に中央に切れ込み、局面を打開するプレーがイスコの最大の持ち味。人並外れた鋭いターンを駆使しながら、ライン間でボールを受けては仕掛けのプレーを見せ、密集地帯を切り開く。ダビド・シルバやイニエスタと同じように、ひとつのポジションに留まるのではなく、自在にポジションを変えることで持ち味を発揮するタイプのアタッカーだからね」

 マドリーの前線には、フィニッシュに特化したタイプの選手が揃うため、崩しや仕掛けよりもむしろ組み立てがメインの、センターハーフ的な役割が求められる。翻って代表では、そうしたポジション的な制約から解放され、独自の発想でプレーを作り上げる環境を享受しているというわけだ。

 奇しくもロペテギ監督が託している偽の左ウイングとしての役割は、2012-13シーズンのCLで鮮烈な活躍を披露し、世界にその名を轟かせたマラガ時代に、指揮官のマヌエル・ペレグリーニから与えられていたそれと酷似する。原点を取り戻させてくれるスペイン代表での躍動ぶりが、イスコのアタッカーとしての適性を如実に示している。

文●ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙/スペイン代表番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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